皆様こんばんは。

すっかり、アフターコロナが始まった感じですね。

電車も混んできたし、いつぶり返してくるのかドキドキしていますが、

痛手を大きく被った飲食業界や集客を旨とする業界の方々は、

「今やらずして、いつやるのか!」
って感じなのでしょう。

お店も混んできた様子なので、今のうちにしっかり稼いでください!って思います。

 

さて、続きです。

 

「大変、あの子、溺れちゃう。」

私は妹たちの浮き輪をぎゅっと握って、母を見守っていました。

 

 

母は、知らない子の近くまで行くと、水中に潜って、水中でバタついている子供の手を掴みます。

 

水深は母の膝くらいに見えたのですが、子供が水中でバタついている辺りは急に深くなっているのでしょう。少し潜った母は、子供を捕まえると、すぐに水の中に立って、子供の手を思いっきり真上に引っ張りました。

 

水しぶきと共に、水面から上に出た子供が、水を吐き出しながら大きな声で泣き出しました。

 

「い、生きてた。」

初めて見た、母が人命救助をする瞬間。ホント、びっくりでした。

 

子供が溺れていた水深が、それでも母の腰くらいだったので、母は難なく子供を助けられたのでしょうが、逆に足が付くくらいの水深でも子供は溺れちゃうのですね。

 

「あ、ありがとうございます。」

その子のお母さんが母に大きな声で、頭を下げながらお礼を言っていました。

 

「海は怖いから、気を付けりいね。」

母はニコニコしながら、半泣きのお母さんにそう言うと、温度は岸に上がってこっちに戻ってきました。

 

「まー、久しぶりにびっくりしたいねぇ。寿命が縮むわ。」

平気な顔でそう言ってます。

 

でも、私とアイトは、ブルブルと震えていました。

 

「アイト、見た?」

「うん。なっちゃんも?」

「うん。」

 

そう。私とアイトは、見てしまったのです。

 

母が子供を助けるとき、子供の下半身には水底にあった黒い何かから細長く伸びた触手の様な、手か足かのようなものが幾重にも絡まっていたのです。

 

そして、母がその子を水面から上に思いっきり引っ張り上げた瞬間に、子供の腰から下に絡まって繋がって来た黒いものが、パッと子供の足から離れて、沖の方に沈んでいる本体?に戻っていくのを。

 

「アイト、怖かったわね。あれって一体何だったのかしら?」

「私もわからないわ。初めて見たから。」

 

「そうよね。私も初めて。」

二人でブルブルと震えながら、そんな会話をしました。

 

確かにアイトは陸の霊体ですから、今までも海には来たことが無かったのでしょう。

 

それにしても、海にはこんな怖いものがあるなんて。その日はもう海に入ることが出来なくなって、夕方に父が迎えに来てくれるまで、海に入れず岸で遊んでいました。

 

あの墨汁を流したように海の底に沈んでいるものは何なのか、これは今でもわかりません。ただ、私とアイトが視えた形があのような形状だっただけで、本当の形はそうとも限りません。でも、形が無いと言うことは、もしかしたら、沢山の霊体の集合体かも知れません。

 

ちなみに母は、どうしてあんなすごいことが出来たのか不思議でしたが、それは私がもう少し大きくなってから、何にかの機会に母から教えてもらいました。

 

そう。母は近隣の市から高杉の家に嫁いできていましたが、母の実家の近くには大きな川が流れていて、子供の頃から真冬以外にはそこで泳いで遊んでいたそうです。

 

私も何度も川を見に行ったことがありますが、底が見えないくらい深くて、そこそこ川幅のある川です。母にはお兄さんが2人いて、ちっちゃな頃から、3人でその川で泳いで遊んでいたそうです。

 

嘘かホントか、5月から10月まで水の冷たい川で泳いで遊んでいたって言うから、たいがいなものです。川は海よりも冷たいし、浮きにくく泳ぎにくいし、流れもあるので、知らないうちに泳ぎがすごく達者になってたのよねーって話してくれたことがありました。

 

でも、びっくりしたのはそれだけではありません。

 

普通、泳ぎが達者なだけでは、あのような状況で人を助けることなどできるはずもありません。

 

どうして母がその時、海の黒いものから子供を助けることが出来たのか。

 

海でも川でも一度黒いものに捕まれたら、ほとんど生きて帰れることなんてないのに、母は平気で子供を助けていました。

 

その頃はまだ知らなかったのですが、これについては結構経ってから、父が教えてくれました。

 

続きます。

 

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