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子供のころ、私の家は小さな駄菓子屋をやっていた。
8畳ほどの広さの店舗に、
ラムネ・チューブのチョコレート・くじ付きの甘納豆・揚げイカ
ひもを引っ張るザラメの付いた飴・・・・
そんなものが、たくさんあった。
もちろん、ほかにも大人相手のお総菜や(母の手作りだった)
ヤマザキのパン、・アイス・袋菓子なんかもあったけれど
子供の目をキラキラさせるのは、やはり駄菓子だった
店のお菓子は制限なく食べても良かったけれど
母から言い聞かされたことは
「黙って持って行かないで、必ず これちょうだい と断ること」
「お客さんがいるときには持って行かないこと」
子供に対するしつけと同時に、
経営者として商品管理と接客態度を毅然とするための
言葉だったと、今は思う。
成長していって、行動範囲が広がるとともに、
世の中にはたくさんのおいしいものがあることを知っていった。
家にある駄菓子よりも
百貨店や街の洋菓子店で売っているケーキやプリンやクッキーの方が
おいしいと思うようになった。
もちろん時には、お店からアイスクリームを持ってきて食べたり
ちょっとした袋菓子(サッポロポテトの小袋とか)を食べることはあったけれど。
そのうち、母も年を取り
それまでのような多種多様な商品を管理・販売することは
難しくなった。
また、近くにスーパーやコンビニができたことによって
パンやお総菜なんかは採算が取れなくなってきたのだ。
私が大学から戻ってきたときには
子供相手の本当の駄菓子やとなっていた。
お店には、子供の私がわくわくして眺めていた小さなお菓子が
あふれていた。
けれど、もう十分に大人になった私には、それを食べようという気持ちは
もう起こらなかった。
そして、家を建て替えることになったとき、母は完全に店を閉めた
最近、昭和ブームで
昭和30年代~40年代のお菓子やジュースなどが復刻版として
売られるようになり、そういう専門店もあると聞いた。
食のテーマパークのようなところで見かけ、
「なつかしーーー」と思ったこともある。
でも・・・・買わなかった。
ハローウィンにもらってうれしいお菓子。
ハローウィンの夜に現れる魔女にお願いしたい。
それは、
今のこじゃれたレトロなお店で売られている駄菓子ではなく
私が子供のころ、母の手から渡されたあのお菓子・・・
それを、もう一度食べてみたい。
今食べたら、
どんな味がするのかしら・・・・・