2020年4月、最初の「緊急事態宣言」が発令されたとき、講談社が
「作家に1日ずつ掌編を書いてもらう」という企画を立てた。
100人の作家が毎日ひとつずつ書いた作品が1つにまとまると、411ページの
大部になった。小説ありエッセイあり。舞台は2020年4月1日以降の日本縛りである。
それがこの本『Day to Day』
1日目は、『鏡の孤城』の辻村深月。ちょっと鏡の孤城を思わせるラスト。
2日目は、西尾維新。「掟上今日子のSTAY HOMES」はガッキーのドラマを
見ていたので懐かしい登場人物たちが出てきてうれしい。
…と楽しみながら読み始めた(2022年2月)のだけど、日を追うごとにちょっとつらくなってきた。
すべて、コロナの話なのだ。少しお休みして、他の図書館の締め切りが迫っている本を
読むことにした。
そのうち、だんだんコロナ禍が落ち着いてきて、マスクをはずす基準の話まで出てきた。
それとともに自分の中でピリピリというか、コロナのことばかり考えるのが収まってきたというか「怖い」という感じが少しずつ落ち着いてきた。今でも救急車が通ると、はっとするけれども、行く先が決まらずに救急車がずっと止まっている…という恐怖からは開放された…気になっている。
それとともに、また半分まで読んだこの本が読みたくなってきた。
再開したらまた楽しめた。叙述トリックに騙されたのは、相沢沙呼の小説と東野圭吾作品。相沢沙呼は『小説の神様』がヒット作とのこと。今度読んでみよう。ラストを飾った東野圭吾のはさすがだと思った。
『罪の声』の塩田武士の作品は続きが読みたいとおもったし、法月倫太郎のエッセイに出てくる『ブラウン神父の秘密』は読みたくなって図書館に予約を入れた。
一方で、家での過ごし方、あるいは出会いについてのエッセイも楽しかった。明太フランスを食べたくて買ってくる話(友麻碧)やダイエットに励む話(今野敏)、「これまでと全然変わらない、なぜなら15年前に緊急事態宣言を自分に出したからだ」と自分の生活を開陳する作家(森博嗣)。
西村京太郎はハイセイコーについて語っていた。調べてみて驚いた。ハイセイコーって無敵の馬じゃなかったんですね。地方(大井競馬場)から中央で活躍するようになり、無敗で日本ダービーに出て、負けてまた人気が上がったという。
奇しくも今日は日本ダービー、テレビの前で正座して夫婦で応援しました。走ってるみんなを。
浅田次郎の郵便ポストに小鳥が巣を作ったというエッセイも印象に残った。小枝の上に苔を何重にも敷き詰め、タンポポの綿毛を乗せた巣に卵を産んで温めていたという描写が、とてもほのぼの。そこから、「小説を書く行為は創造とも表現とも言い切れぬが、卵をかえすと言えば、まこと当を得ている。己の本分に忠実である限り、世間の騒ぎとは無縁である」と結んであった。テレビやネットに振り回され過ぎたかなと思ったことだった。
現代日本作家のほぼオールスターともいえる面々の掌編集。あれ?あの人はいなかったなという人がいないでもないが、読み応え十分。やはり今読んでよかったと思う。(5月29日 記)
