今日の一冊は『私の本棚』です。
本は増やそうと思わなくても増える。だんだん生活空間を圧迫してくる。
そんな苦労が自分だけではないと思えた安堵。
楽しい本です。
 
2018年01月20日
「増え続ける蔵本と本棚に悩むすべての読書家に贈る書」
帯によると「23人の読書家による本棚にまつわるちょっといい話」

「ずらっと本の並んだ自分の本棚というのが、あこがれだった」
最初のエッセイは小野冬美の「すべての本を一列に並べよ」
タイトルに反して現実は「スチール製の本棚一本だけの時代から、
本は常に前後二列が当たり前。そのうえ横になって隙間をうめ、
それでも足りずに棚からあふれて床に石筍のごとき柱を作っていく」
…同じだ。共感できすぎる。もっとも、新居の本棚を作るにあたり、
蔵書すべての背幅を測るのは、すごすぎてまねできないけど。

書庫に仏壇を置いた赤瀬川源平。
「本のこととなると自分でもおかしいと思うくらい執着心がわく」のは児玉清。
「本の重さを思い知ったのは建売住宅の床が抜けたときである」と書くのは井上ひさし。
池上彰は自分と遊んでくれない父に反発を感じたが、結局は本棚に囲まれて
ひたすら机の前に座っている生活に至福を感じる。結局は父と同じことをしていた
と回想する。
登山家の田部井淳子は「本を持ち出して出かけ、帰ってきたらそこへまた本を収める。
そんな読書のベースキャンプのような場所が存在すること自体が大切である。
世界の山々での読書はこの本棚が無くては成り立たない」と語る。

しめくくりは、福岡伸一(生物学者)の「アマチュアの本棚」。
「科学を支えているのは実は科学者ではない」という一節にはひきつけられる。
「不思議な化石を偶然掘り出すのも、不意に夜空の底に流れるすい星を真っ先に
とらえるのも、象牙の塔にこもった職業的な科学者によるものではない…そういう
意味において、私はアマチュアの虫好きであり、アマチュアの本好きであり続けたい
と思う」

名だたる読書家たちと少しお近づきになれた本であった。