今年7月に読みました。
『戦争は女の顔をしていない』の姉妹編のような物語です。
あちらは実録、こちらはフィクションですが。
戦争が終わらない。そしてその影響が暮らしにも。
 
2022年8月1日

492ページの大部だが、あっという間に読めた。
出版は2021年11月、2022年3月に17版が出ているベストセラー。

独ソ戦(第2次世界大戦)中、ソ連軍に出現した女性だけの狙撃小隊の1員セフィマが主人公。
ドイツ兵に母を殺され故郷の村をソ連の部隊に焼かれた彼女は、「戦うか?死ぬか?」と隊長に問われ、狙撃兵の学校に連れていかれる。そこにはウクライナ出身者や貴族出身者、カザフの猟師などさまざまな背景の隊員がいた。
訓練を終えた彼女らは、スターリングラード攻防戦、要塞都市ケーニヒスブルクの戦いに
加わる。最後に、セフィマは母を撃ったドイツ兵に肉迫。…仇をとりたい。
その後の展開は、予想を超えた。「女性を守るために戦いに身をを投じた」とする
自分の本分を彼女は全うする。戦後、隊長(女性)と暮らす主人公の元に1通の手紙が届く。これも「ああ、そこにつながるのか」と納得のラストだ。

ロシアのウクライナ侵攻からしばらくは、戦争報道が連日流れ、まるで戦争を体験して
いるかのような錯覚に陥っていた。今は、ほとんど触れられず、ようやく
戦闘地域の当事者のような錯覚から覚めた。そんな今だから、読めた。
独ソ戦ではあるが、ヒトラーのやったこと、物語中で行われること、それが
そのままプーチンにつながる。ウクライナがソ連に何をされたか、作品中にも書いてある。戦争の歴史は、なぜ同じことを繰り返すのか?

エンタメであり、ミステリであり、歴史の一端を伝える書である。