そうすると傍観していた他の男子学生たちが、立ち上がる。
「何するんだテメェ!」
男子学生たちは、一斉に俺を囲む。
「とりあえず、女はさらえ!
男は、適当にボコっとけ!」
男子学生たちのリーダーらしき男が、指示を出す。
相手は6人……
勝てないだろうなぁ。
いじめられっこ拳法も流石に人数が多すぎる。
男子学生の1人が、俺めがけて殴りかかって来た。
俺は、それを避ける。
攻撃を避けたついでに俺は、その男子学生の腹部に一撃与える。
俺は、力はない。
だから、ダメージはそんなには与えれないだろう。
「一!」
清空との距離が放されている。
車の中に連れ込まれようとしている。
俺は、ガラの悪い男子学生たちを振り払い清空の方へと向かった。
「清空!」
俺は、リーダーらしき男の背中に蹴りを浴びせる。
「なにするんだ!
テメェ!」
リーダー格の男は、ポケットからバタフライナイフを出した。
そして、刃の部分を出し俺の腹部にそれを刺した。
意識が薄れる。
俺、死ぬのか……
なんか、前の死に方と同じじゃないか……
確か、あの時の女の子も死んだんだよね。
清空も、弄ばれたあと殺されるのかな。
哀しみ。
怒り。
虚しさ。
その全てが、俺を襲う。
不思議と恐怖は無かった。
俺は、ナイフが刺さったまま大きな声をあげた。
「清空を放せ!」
「なんだ?
テメェは!」
俺は、もう誰も死なせたくない。
俺は、もう誰も失いたくない。
助けるんだ、清空を……
俺は、全身の力を込めてリーダー格の男の顔に一撃与えようとした。
だけど当たらなかった。
からぶり。
かっこわるい……
意識が薄れ、俺はその場で倒れる。
「この死にぞこないが!」
リーダー格の男が、俺を何度も蹴る。
パトカーのサイレンが、近づいてくる。
警察、来てくれたのかな?
清空、助かるのかな?
あはは……
俺は、また死ぬのか。
刺されたお腹が痛い……
結局彼女、出来なかったな……
でも、前の人生以上に今の人生は楽しかったな……
俺は、ゆっくりと意識が消えゆく。
清空の泣き叫ぶ声と俺の名前を呼ぶ声だけが耳の中に残った。
俺は、ゆっくりと目を閉じた。
そして、再びゆっくりと目を開けると俺は、電車に乗っていた。
やっぱり、俺は死んだのか。
俺は、ぼーっと電車が止まるのを待った。
電車は、すぐに止まった。
「煉獄ー煉獄ー煉獄ー。
お降りの方はここでお降りください」
アナウンスが流れる。
俺は、静かに電車を降りた。
するとそこには、あのお爺さんが立っていた。
「一様、お久しぶりです」
「お久しぶりです」
俺は、苦笑いを浮かべた。
「かみさまが、お待ちです。
こちらへどうぞ……」
俺は、お爺さんの案内でかみさまのいる場所に向かった。
「一よ。
主は何死んでいるのだ?」
かみさまの第一声はそれだった。
「死んだモンは、仕方ないです……
清空は?清空は無事ですか?」
「ああ。
無傷で済んだ。
お前が頑張ったからな」
「そうですか……
よかった」
俺が、安心するとかみさまが、静かにため息を着く。
「よくはないだろう?
主は、死んだんだぞ?」
「でも、清空が無事なんでしょ?
だったら、俺の死は無駄じゃなかった」
「余には主の考えがいまいち解らん。
主の願いも叶わず終い。
主は、まだ死ぬ時期ではないのだぞ?」
「死ぬ時期って……
今が、そうじゃないんですか?」
「主の死ぬ時期は、28歳だ。
今は、死ぬ時期ではない」
「……でも、死んじゃいました」
「うむ……
実は、余は主に一つ嘘をついた」
かみさまは、ため息交じりにそう言った。