スローライフ~第四章:自由なき戦い 09 | ニート脱出大作戦β

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~ニートから抜け出す108の方法

 自由の2回目の誕生日を迎えるころ。
 空は、消える。
 なんの言葉もなくなんの前触れもなく……
 突然消えた。
 その時、空は風邪をひいて熱を出していた。
 僕が、職場である学校から帰ると自由だけが残されていた。
 熱が、39度もあった。
 自由は、そのまま入院した。
 空は、そんな自由のことを放っておいて何処かに出かけた。
 自由は、何度も「ママ、ママ」と空のことを呼んでいた。
 最初は、買い物だと思っていた。
 でも、1日経っても帰ってこない。
 2日過ぎても帰ってこない。
 3日過ぎた頃、俺は警察に捜索願いを出した。
 恐らく家出だろうと言われた。
 僕に嫌気がさしたのか。
 子育てのノイローゼになったのか。
 それは、わからない。
 ただ居なくなった。
 帰ってこなくなった。
 それだけが、わかった。
 携帯も繋がらない。
 お義父さんにも連絡してもらったけどやっぱり繋がらなかった。
 一人娘である空が、行方不明になってショックを受けたのか暫く入院していた。
 今では、少し元気を取り戻しているけれど当然のことながら元気はない。
 自由とたまに一緒に遊びに行っているけれど自由の前だけは元気に振る舞ってくれている。
 自由は、空のことを覚えていない。
 夢の中だけで覚えている。
 空の写真だけで覚えている。
 前の保育園で、『ママの絵を書こう!』というのがあったけれど自由は、なにも書かなった。
 理由を聞いてみたら、「ママがわからないから」と答えていた。
 「写真があるでしょ?」と聞いたら黙ってしまった。
 だから、それ以上聞かなかった。
 聞けなかった。
 自由の悲しい顔を見たくなかったから……
 だから、それ以降僕は自由に空のことを話さない。
 自由の笑顔を護るため、僕は決意を固めた。