「ん?小野寺、なんかあったのか?
元気ないぞ」
百道君が、僕に気を使ってくれる。
なんだかんだいっても優しいんだね。
「なんにもないよ。
むしろなんにもないから元気がないんだよ」
僕は嘘をついた。
元気はないのは自由が心配だから……
でも、それをこの子たちに言う訳にはいかない。
言った所で何かが変わるわけじゃない。
今は、この子たちに勉強を教えることだけを考えよう。
「はぁ?なんだよそれ」
「いいからさ……
今は、ホームルームをはじめるよ」
そう、今はまずホームルームだ……
「なに今にも死にそうな顔をしてるんだよ?
シケた面見せんじゃねぇーよ」
慈君が、僕を睨む。
「僕は、死にそうになってないよ」
死ぬほど苦しいのは自由の方だ。
「昨日のリベンジだ!
かかってこい」
滋君は立ち上がり僕を挑発する。
「はぁ……」
「なんだ?怖いのか?あの機械音がしていないってことは今は起動していないんだろう?
だったら、お前みたいなやつ一瞬で――」
滋君がそこまで言いかけた時、僕の体は動いていた。
僕は、一瞬で滋君の背後まで移動し出席簿で滋君の頭を叩いた。
軽くね。
「な、何が起きたんだ?」
百道君が目を丸くさせて驚く。
「簡単なことだよ。
10秒ほど僕以外の時間を止めたんだよ」
僕が、さらりと答えると海夜さんがすかさずツッコミを入れる。
「それ簡単ちゃうやん?
時間を止めるって……え?そんなんノーベル賞並なんちゃうん?」
「そんなことないよ。
時間を止める技術は、アンバランサーを作る過程で出来たものだし……」
「アンバランサー?」
百道君が不思議そうな顔で僕の方を見る。
「昨日のバリアだよ」
「ああ……ビームのやつか」
「レーザーだよ」
百道君のセリフに僕は即答する。
「どっちでもええわ!」
海夜さんが、そう言って僕と百道君の頭をスリッパで叩く。
「だから、漫才はやめーっての!」
美樹さんが、ため息混じりに言葉を吐き出す。
「おい!
小野寺!俺との勝負ついてねーぞ!」
滋君が、暴れると美樹さんが言葉を投げる。
「慈くんももうやめなって……
時間を止められたら勝てないってば!」
「なんだと?」
滋君が、美樹さんを睨む。
「慈くんでは、まだ小野寺に勝てないよ」
「殴られたいのか?」
滋君が美樹さんに拳をあげる。
「うわ!
コイツ女に手を出す気か?」
海夜さんがそう言うと百道君が笑う。
「そりゃ、男女平等の時代だからな」
「うわ!
サイテーやな自分!」
海夜さんが、そう言ってため息をついた。