ジンクス∞漁猫~第五章:僕のために03 | ニート脱出大作戦β

ニート脱出大作戦β

~ニートから抜け出す108の方法

「よかった。
 材料、持ってきましたのですぐに作りますね」
 川名さんは、そう言って僕に食材の入った手さげ袋を見せてくれた。
「うん。
 ありがとう」
 僕は、川名さんを家に招いた。
「では、すぐに作りますから一さんは、リビングでのんびりしていてください」
「うん。
 ありがとう」
 僕は、言われるままにリビングでのんびりとしていた。
 でも、心は落ち着かない。
「はい、出来ましたよ」
 川名さんが作ってくれたのは、ベーコンエッグとサラダの盛り付け。
 そして、温かい味噌汁だった。
「お口に合うと良いのですが……」
 僕は、みそ汁に口をつけた。
 何処か懐かしい味がした。
「この味、なんか懐かしいや」
「え?」
「お母さんの味に似てる」
 僕は、素直に感じた言葉を言った。
 川名さんの表情が一瞬曇る。
「とても美味しいよ」
「よかったです」
 僕たちは、ゆっくりと朝食を食べた。
 ゆっくりと食べれる食事は美味しかった。
 僕は、生きている。
 そう、生きているから食べる。
 食べるから生きることが出来る。
「ありがとう」
 自然と出た言葉だった。
 そして、何故だろう?
 その言葉と一緒に涙がこぼれた。
「一さん?」
「なんでだろ……
 今頃になってやっと涙が……
 ホント、カッコ悪いよね……」
 僕の目からは、情けなさも合わさってなのか涙がどんどん溢れ出た。
 川名さんが、ゆっくりと僕に近づき僕を抱きしめてくれた。
「川名さん……?」
 川名さんの体も震えている。
「ごめんなさい……
 私のせいなんです……私の……」
 川名さんは、何度も何度も謝った。
「川名さん、どうしたの?
 『私のせい』ってどういうこと?」
 川名さんは、大きな声を上げて泣いた。
 川名さんが、泣いている?
 どうして?
『私のせい』って、どういうことだろう?