「よかった。
材料、持ってきましたのですぐに作りますね」
川名さんは、そう言って僕に食材の入った手さげ袋を見せてくれた。
「うん。
ありがとう」
僕は、川名さんを家に招いた。
「では、すぐに作りますから一さんは、リビングでのんびりしていてください」
「うん。
ありがとう」
僕は、言われるままにリビングでのんびりとしていた。
でも、心は落ち着かない。
「はい、出来ましたよ」
川名さんが作ってくれたのは、ベーコンエッグとサラダの盛り付け。
そして、温かい味噌汁だった。
「お口に合うと良いのですが……」
僕は、みそ汁に口をつけた。
何処か懐かしい味がした。
「この味、なんか懐かしいや」
「え?」
「お母さんの味に似てる」
僕は、素直に感じた言葉を言った。
川名さんの表情が一瞬曇る。
「とても美味しいよ」
「よかったです」
僕たちは、ゆっくりと朝食を食べた。
ゆっくりと食べれる食事は美味しかった。
僕は、生きている。
そう、生きているから食べる。
食べるから生きることが出来る。
「ありがとう」
自然と出た言葉だった。
そして、何故だろう?
その言葉と一緒に涙がこぼれた。
「一さん?」
「なんでだろ……
今頃になってやっと涙が……
ホント、カッコ悪いよね……」
僕の目からは、情けなさも合わさってなのか涙がどんどん溢れ出た。
川名さんが、ゆっくりと僕に近づき僕を抱きしめてくれた。
「川名さん……?」
川名さんの体も震えている。
「ごめんなさい……
私のせいなんです……私の……」
川名さんは、何度も何度も謝った。
「川名さん、どうしたの?
『私のせい』ってどういうこと?」
川名さんは、大きな声を上げて泣いた。
川名さんが、泣いている?
どうして?
『私のせい』って、どういうことだろう?