美紗と護は、小さな箱の中に収まった。
人ってこんなに小さくなるんだな。
そう思うと胸が苦しくなる。
僕は、息を吸い込みそして吐く。
「あんまり実感がわかないね」
叔父さんが、小さな声で言う。
「そうですね……」
「命がある限りいつかは尽きることがあるのは、頭ではわかっていた。
だけど、こんなに早く来るとは思っていなかったよ。
俺は、立派な父親でいられたのだろうか……」
叔父さんが、肩を震わせる。
こういう時、なんて言えばいいのかわからない。
「大丈夫です。
美紗さんを失ってこんなに悲しんでくれるお父様です……
きっと美紗さんも幸せだっらでしょう……」
「川名さん……」
「私の両親は、私のことをモノとしか見ていませんでした。
小さいころの話なのでよく覚えていませんが、私にとっての両親は怖いモノでしかありませんでした……
それでも、何故か嫌いになれませんでした」
「ありがとう」
叔父さんは、小さくお礼を言うとその場を離れた。
「私、仕事があるので戻ります……」
川名さんは、そう言ってその場を去ろうとした。
「家まで送るよ」
「え?」
「僕も、そろそろ戻らなくちゃ……」
僕は、叔父さんに声を掛けたあと川名さんと一緒に家に向かった。
何も話さなかった。
家の前で「じゃあね」と言って別れた。
真っ白になった僕の心は、空っぽ。
何も残っていなかった。
家には、誰も居ない。
当たり前のはずなのに寂しかった。
愚痴をよくこぼしに僕の家に来てくれた美紗。
朝が弱い僕を起こしに来てくれた美紗。
料理は、僕の方が上手だったけどよく作りに来てくれた美紗。
もうこの世にはいないんだ……
ねぇ、神様。
僕は、また一人ぼっちになったのかな?
何気なしにつけたテレビの音だけが僕の耳の中に入って来た。