ジンクス∞漁猫~第五章:僕のために01 | ニート脱出大作戦β

ニート脱出大作戦β

~ニートから抜け出す108の方法

 美紗と護は、小さな箱の中に収まった。
 人ってこんなに小さくなるんだな。
 そう思うと胸が苦しくなる。
 僕は、息を吸い込みそして吐く。
「あんまり実感がわかないね」
 叔父さんが、小さな声で言う。
「そうですね……」
「命がある限りいつかは尽きることがあるのは、頭ではわかっていた。
 だけど、こんなに早く来るとは思っていなかったよ。
 俺は、立派な父親でいられたのだろうか……」
 叔父さんが、肩を震わせる。
 こういう時、なんて言えばいいのかわからない。
「大丈夫です。
 美紗さんを失ってこんなに悲しんでくれるお父様です……
 きっと美紗さんも幸せだっらでしょう……」
「川名さん……」
「私の両親は、私のことをモノとしか見ていませんでした。
 小さいころの話なのでよく覚えていませんが、私にとっての両親は怖いモノでしかありませんでした……
 それでも、何故か嫌いになれませんでした」
「ありがとう」
 叔父さんは、小さくお礼を言うとその場を離れた。
「私、仕事があるので戻ります……」
 川名さんは、そう言ってその場を去ろうとした。
「家まで送るよ」
「え?」
「僕も、そろそろ戻らなくちゃ……」
 僕は、叔父さんに声を掛けたあと川名さんと一緒に家に向かった。
 何も話さなかった。
 家の前で「じゃあね」と言って別れた。
 真っ白になった僕の心は、空っぽ。
 何も残っていなかった。
 家には、誰も居ない。
 当たり前のはずなのに寂しかった。
 愚痴をよくこぼしに僕の家に来てくれた美紗。
 朝が弱い僕を起こしに来てくれた美紗。
 料理は、僕の方が上手だったけどよく作りに来てくれた美紗。
 もうこの世にはいないんだ……
 ねぇ、神様。
 僕は、また一人ぼっちになったのかな?
 何気なしにつけたテレビの音だけが僕の耳の中に入って来た。