ジンクス∞漁猫~第四章:悲しみのワルツ27 | ニート脱出大作戦β

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~ニートから抜け出す108の方法

 ……コンコン
 優しくドアをノックする音が聞こえた。
「あ、はい……」
 僕は、ゆっくりと体を起こす。
 するとドアが開き叔父さんが現れる。
「あと1時間で葬儀がはじまるよ。
 そろそろお別れだ……
 もう一度、顔を見てやってくれないか?」
「あ、はい」
 僕は、体を起こし美紗の眠る部屋へと向かった。
 美紗の顔は綺麗だった。
 誠の顔も綺麗だった。
 その表情に辛さは無かった。
 痛かっただろう、辛かっただろう。
 苦しかっただろう……
 僕は、ゆっくりと息を吐いた。
「おはようございます」
 僕は、その声に驚き振り向くと川名さんが立っていた。
「川名さん、おはよう」
「眠れたみたいですね」
「うん。
 川名さんも眠れた?」
「はい」
 川名さんは、ゆっくりと頷いた。
「よかった」
「……おはよう。
 君も来てくれたんだね……」
 叔父さんが、苦笑いを浮かべる。
「あ。はい。
 美紗さんは、私の数少ないお友達でしたから……」
「そっか……
 君は、川名さんって言ってたね……
 美紗から話は聞いているよ。
 一君と同じバンドの子だってね」
「はい」
「昨日は、ありがとう」
「いえ……
 私には、これくらいしかできませんから……」
「美紗も天国で喜んでいるよ」
「そう願います」
「さて、葬儀がそろそろはじまる。
 君たちもよかったら関係者席で参列してくれ」
「はい」
 僕は、頷くと川名さんと関係者席に座った。
 暫くするとお経がゆっくりと流れる。
 お経が終わると美紗と護の体に花を添えた。
 クラスの女子が、声をあげて涙を流す。
 僕も泣きたかった。
 でも、泣けなかった。
「大丈夫ですよ」
 川名さんが、ぎゅっと僕の手を握り締めてくれた。
 ほんの少しだけ心が温かくなった。