夜が来る。
静かなる夜が……
「もうこんな時間か……
帰らないと」
亜金が、そう言って由香の方を見る。
「私は、大丈夫」
「え?」
「奈留先生にはワシから連絡した」
源流才が、そう言って現れる。
「爺ちゃん?」
「久しいのう。
亜金……主がいない間、薫ちゃんと由香ちゃんは寂しい思いをしていたんだぞ?」
「そっか……
ごめんね、ふたりとも」
亜金が、小さく謝った。
すると亜金の後ろからふと小さな気配を感じた。
亜金が、すぐにその気配の場所を見る。
するとそこには、理香がいた。
「……お兄さん」
「理香ちゃんどうしたの?」
「今すぐ、南お姉ちゃんのところへ行って!」
理香ちゃんが、真剣な表情で亜金の方を見た。
「え?」
亜金には、何のことかわからない。
「早く!」
理香は、そう言って走る。
亜金は、なんのことかわからなかったが源流才と共に南がいる台所に向かった。
するとそこには、橘がいた。
南の服を剥ぎ胸に手を当てていた。
「亜金さん……
お爺ちゃん……」
南が、涙目で亜金たちの方を見る。
「待って!
今、助けるから!」
亜金が、橘の方を睨む。
「武器を持たない相手に何が出来る?」
橘が勝ち誇った顔で言う。
源流才が、素早い動きで橘の方に向かって拳を当てようとする。
しかし、橘は体を霧状にしてそのまま姿を消す。
「安心しろ!この女は、たっぷりと楽しんだ後殺してやる!」
そこには、橘の笑い声がこだまする。
「ワープじゃと……?」
源流才が、焦る。
「ちょっと!
なにがあったの?」
チネッテが、ふたりの子供を抱きかかえ息を切らせて現われる。
「南ちゃんが、さらわれた……」
亜金が、小さく呟く。
「え?」
チネッテには、何のことかわからない。
亜金は、説明が下手だった。
だからチネッテに上手く言葉を伝えることが出来ない。
「ごめんなさい。
私が、もっと早く気づいていれば……」
理香が謝る。
「いや、理香ちゃんのせいじゃないよ」
亜金が、そう言って涙をこぼす。
「亜金!答えろ!
あの男は何者じゃ!?」
「あの男は、ベルゼブブの橘 勤……
最悪の男だよ」
「ベルゼブブじゃと?」
「早く、ICPOに連絡しなくては……」
チネッテは、そう言って携帯を取り出しICPOに連絡した。
すぐにICPOの捜査部のモノたちがやってくる。
しかし、体液などのDNAが見つかっても意味はなかった。
何故なら指名手配犯の橘勤であることはわかっていた。
それ以上の情報などあっても意味がなかった。
捜査員と亜金たちの捜査虚しく……
翌日の昼、橋の下で全裸で横たわる南の遺体が見つかった。
その顔は絶望で満ちていた。