ニートライター亜金の事件簿・改~第三章:赤ちゃんの十戒09 | ニート脱出大作戦β

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~ニートから抜け出す108の方法


夜中に目が覚める。
誰もいない孤独な夜。
今泣いても誰も気づいてくれない。
「大丈夫」って抱きしめてくれたパパはもういない。
私は、我慢した。
ママは夜もお仕事。
昼もお仕事。
朝は寝ている。
私と由香は、お留守番。
パパ。
私、ミルクの入れ方上手になったよ。
私、おしめの交換も上手になったよ。
教えてあげたいな。
教えたら褒めてくれるかな?
会いたいな。

そんなある日の夜。

ママは、1人の男性をマンションに連れてきた。
私は、怖いので寝ているフリをした。
「この子が、俺の子……?」
男は、由香の指さして冷たい口調で言った。
「そうよ」
ママが、寂しそうに言う。
あれ?由香は、その人の子じゃないよ。
パパの子だよ。
「全然似てないな……」
「そう?
 目元なんて武君にそっくりよ」
ママの口調も冷たくて怖かった。
いつものママじゃないみたいだった。
「ふーん。
 で、この子は?」
男は、頷くと私の方を指さす。
「私の子よ」
「ふーん」
男の人は、そう言って私の頬を指でつく。
怖い……
怖くて怖くて私は固まってしまった。
「やべ。
 頬っぺた柔らかい」
男の人がケタケタ笑う。
私は、ママの方を見た。
ママ、助けて……!
「理香。
 起きちゃったみたいね……」
ママは、そう言って私の方を見る。
「この人誰?」
「この人は、武さん。
 理香の新しいパパよ」
パパ?
パパは、パパだよ。
この人は、パパじゃない!
私には、ママが何を言っているのかわからない。
パパは、パパだけ。
この人はパパじゃない。
私は、泣きたくなった。
でも、泣きたくなかった。
負けるのが嫌だから……
だから、私は泣かなかった。
「理香。
 きちんと挨拶なさい」
ママが、そう言って私の方を見る。
「こんばんは……」
私は、簡潔に挨拶した。
「……ふん。
 俺、子供嫌いだから……」
男の人は、そう言うと再びケタケタと笑う。
「武さん、そんな事言わないで……」
ママが、男の人にそう言った。
そっか……
この人は、『武』って言うんだ。
私は、この人の事を『武さん』って、呼ぶ事にした。
絶対、パパなんて言わない。
パパは、パパ1人だけだから……
私は、決めたんだ。
パパが、戻ってくるまで私は、パパを待つと……
武さんは、その日から毎日家に居た。
ママは、仕事に出かけ。
家には、私と由香。
そして、武さんの3人だけ残る。
武さんは、パソコンでお仕事をしているらしい。
だから、ずっと家に居る。
私が泣いても無視。
由香が泣いても無視。
ご飯も自分の分しか用意しない。
私は、ママから貰った500円で、昼ご飯を食べる。
由香のご飯は、私が用意。
由香のオシメも、私が交換。
ミルクの作り方もオシメの変え方も上手になったよ。
だから、パパ。
早く帰って来て……
私が、そんな事を考えながらクリームパンをかじる。
たまには、ママが作ったホットケーキ食べたいな……
でも、ママは昼も夜も働いている。
朝は、疲れて眠っている……
だから、そんな我がまま言えない。
ママに遊んでもらえない毎日。
ママ、私寂しいよ。