まおうのえにっき:四話 | ニート脱出大作戦β

ニート脱出大作戦β

~ニートから抜け出す108の方法

万桜は、暗がりの道を歩いていた。
ある気配を察知していたのだ。
その気配は、神力つまり、神の力の気配だ。
願神でもない、他の力を持った神。
その力は人と同化しつつある。
同化するという事は、人の魂を喰らう存在か・・・
あるいは・・・

万桜がそんな事を、考えている間に、その本人が目の前に
立っていた。


『俺に、何かようか??魔王』


男は学生服を着て、細い目でメガネを上にあげながら万桜を睨んでいた。


『ほう、私の存在に気づいていたのか・・・?』


『ああ、その前に、まず一つ礼を言わせて貰おう。』


『礼??』


万桜は、意味不明な言動をする、その男の顔を睨みつけた。


『妹を助けてもらった。ありがとう。』


『妹だと??』


『薄黒い髪の毛でショートカット。目の色が藍色なのだが・・・
 わからないか??』


『あぁ、先ほど娘の事か??』


『そうだ。ありがとう。』


万桜は、手を顎にあて考えた。


『お前を場合によっては退治しようと思ったのだが・・・
 顔はともかく、さほど邪悪には見えないな・・・
 お前は何者だ?』


男はニコリと笑い答えた。


『俺の名前は、美神零(みかみれい)。美の神の化身だ。
 まぁ、神と言っても力はさほど残ってはいないがな・・・』


『まず質問に答えろ。お前のその姿、いや外側は“人”だな?
 それは、どうやって手に入れた。』


零は、少し切なそうな顔をしながら『長いがいいか?』と聞き、
万桜もそれに同意した。


『まず、君が助けたのは、美神愛衣(みかみあい)。
 俺の双子の妹だ。
 他に姉弟が居る。長女の花蓮(カレン)、次女の理香(リカ)
 俺達四人は、それぞれの美の神の化身で。
 俺が、【芸術の美】、愛衣が【自然の美】、花蓮が【造形・構造の美】、
 理香が【機能の美】の四つだ。』


万桜は、首を傾げながら聞いた。


『君は、神の中には信仰が無ければ存在できないモノが
 居る事を知っているか?』


万桜は、首を縦に振った。


『聞いたことはある・・・』


零はメガネを外して話を続けた。


『俺らもその存在の中の一つだ。
 もうこの世界では俺らへの信仰はほぼ無く。
 俺らは静かに消えようとしていた、その時。
 俺らの前で、大きな事故が起きたのだ。
 命が切れ掛かっていた母親が、俺らの前に現れた。
 その母は子を二つ身ごもっており、三つの命は手遅れ
 だった。それを知ってか知らぬか、こう願ったのだ。
 【どうか、私達の子供だけでもお救い下さい】とな・・・』


万桜は、大体状況を理解できたが、黙って話を聞き続けた。


『しかし、もうその子供達も息を引き取っていた。
 そして、母親も命を落とした。』


『俺らは、消えかかっていた。
 助かるにはその願いを叶えるしかなかった・・・』


黙っていた万桜が、やっと口を開いた。


『それで、お前らはその四つの入れ物に入ったと言う訳か・・・』


零は黙って頷いた。