時が過ぎるのは早いものだ…
何もない世界…
恐怖・孤独も感じない世界…
目の前に小さな箱があった…
白い箱の中に彼女がいつもの優しい笑顔で彼方を見つめた…
『彼方君にプレゼントを持って来たよ…』
嬉しいはずなのになぜか涙が彼方の頬から溢れた…
『泣かないで…
ずっと側にいるから…』
そう、言うと、
彼女は優しく彼方を抱き締めた…
彼方は声が出ない涙を流しながら
彼女の胸の中に体を埋めていった…
彼方が目を覚ました時、
彼女は側にいなかった…
見慣れ始めた白い天井に、
堅いベット…
彼方は涙で腫れたのだろう
瞳から涙が零れた…
知らない筈の彼女の温もりを
肌で感じながら…
次の日、彼方は緊急手術をした…
手術は成功した…
その後…
病室の窓からあの広場に目をやっても
彼女の姿を見る事は一度も無かった…
退院する時、看護婦に聞いてみたが
答えてはくれなかった…
そして、彼方は普通の大学生に戻った…
彼女の存在を胸に止めながら…