少年には何が起きているか判らなかった。
布団、シーツ、ベット、包帯、手当て・・・
そんなものは、今まで触れたことも無かったし
包帯に関しては使い方さえもわからなかった。
少年はどこにでも寝ていたし、
怪我したら適当に山の薬草を適当に塗って過ごしていた。
食事も山の動物や木の実などを食べて過ごしていたので、
「料理」という存在すら知らなかった。
少年は何が起きているか全くわからなかった。
混乱している少年に気づいた少女は、優しく少年に語りかけた。
『大丈夫だよ、口開けれる???』
少年はだまって口を開けた。
すると少女はゆっくりと、口にスプーンを当ててスープを流し込んだ。
暖かい感触、暖かい味、今までに味わったことの無い感触だった。
少女は少し不安げに、そしてどこか照れながら少年に尋ねた。
『美味しい・・・かな?』
少年は【美味しい】の意味はわからなかった・・・
だから、何も答えることが出来なかった。
でも、それを伝える事は出来た。
目を丸くして、「もう一杯欲しいな・・・」とアピールしてみせたのだ。
少女はそれに気づき、嬉しそうにスープを少年の口に運んだ。