少年と少女:1話 | ニート脱出大作戦β

ニート脱出大作戦β

~ニートから抜け出す108の方法

少年は夢を見た・・・
小さな小さな夢を・・・
少年は夢を見た・・・
小さな幸せな夢を・・・
暖かい夢を・・・
でも、それは夢でしかなかった・・・
少年は傷つき、
今、命を落とそうとしている・・・
生まれてすぐに親に捨てられた・・・
だから、名前も持っていない。
捨てられてから15年間
どうやって生きてきたのかも
どうやって生きていけばいいかも判らなかった
盗みもしなければ、誰かを傷つけた事も無かった・・・
ただ、存在だけで傷つけられ・・・
今、息を引き取ろうとしている・・・
少年は木に体をよせかけながら
少年は何度も、何度も思い出していた・・・
自分が生きた証を・・・
少年は何度も、何度も考えていた・・・
自分が生まれた理由を探していた・・・
だけど、見つからなかった・・・
心臓の音が木を伝って耳に入ってくる・・・
トックン、トックン、トックン・・・
薄れ行く意識の中、
ゆっくりと何かが近づいてくるのがわかった。
少年はゆっくりと目を開けた・・・
目の前には一人の少女が立っていた・・・
少女はおっとりとした口調で少年に聞いた。


『どうしたの???』


少年は少しだるそうな声で答える


『たぶん、死ぬところ・・・』


少女はさっきと変わらない口調で答えた


『死んじゃうの?』


『多分・・・』


『そっか・・・』


少年はこの時、気づいた・・・
初めて『人』に話しかけられた事に・・・
少年は名前も知らない少女にお礼を言った・・・


『ありがとう』


お礼を言ったのに涙が出た・・・
嬉しいはずなのに涙が出た
そして、少年は静かに眠りについた・・・