「いちにーさんしー.....んーーー減って来たネー...」

「お前が逃がすからだろ」

「ごめんッテw」

クロックは右側にしか生えていないうさぎの耳を揺らし、おどけた様に謝った

その瞳は相手を嘲笑するように歪んでいる

バウは犬用の口輪の下で、舌打ちをする

「....次逃がしたらてめえの喉笛噛みちぎるからな」

「きゃーコワーイw狼さんに食べられチャウwww」

そう言って笑いながらクロックはバウの背中をバシバシ叩く

骨が軋むほど

全力で

「.......」

「怒んないでョwwwwワンチャンwwwwwwww」

「誰がわんちゃんだ!!!!!」





やいのやいのと騒ぎ立てるふたりを檻の中の者達は正気のない瞳で見つめる

彼らは人間

二人に捕まり、幽閉されている者達

その中で状況が分からないのか、オロオロと戸惑っている人間がいた

「......あの...すみません...」

近くの男に話しかけるが、返事はない。
ただ焦点のあってない目で、ぼうっと檻の外を見ているだけだ

「あの.....ここは....?」

「ラガドゥーイの研究所跡だよ、少年」

突然の声にビクリと体を震わせ、大声を上げそうになると、素早く手で口を塞がれる

「しっ....奴らに変に目をつけられるのは困るからね。静かにこっちにおいで」

ゆっくりと後ろを振り向くと、黒い髪の凛々しい顔をした女性がいた

随分とやつれてしまっているが、相当な美人だとわかる。

彼女の方に出来るだけ音を立てないように近づく。

「えっと....」

「昨日連れてこられた子だね。自分の名前は言えるかい?」

「はい....エリクです」

「私は、レナだ。数年前からここにいる」

「ここはなんなんですか...?」

「.....ここはね。奴ら、ズィール達の巣さ」

「ズィール?」

「あそこでギャンギャン騒いでる、ツギハギの服きた奴らのこと」

レナは顎で檻の外をさす

「ああ....で、なんで僕らはここへ?」

「なんでだと思う?」

ニヤリと口角をあげてレナは笑う

風貌も相まって、どこかの悪の女王見たいだなと思ったことは伏せておく

「.....奴隷とかですか?」

「それならまだよかったんだけどね。」

苦虫を噛み潰したような顔をして語り出す

「食われるのさ。奴らに」

「へっ!!?!」

思わず大声を出してしまい、慌てて口を塞ぐがもう遅い

(どうしようどうしようあの人達に気づかれちゃ行けないはずなのに、食べられる???食べられるの????どうしようどうしようどうしようどうしよう.....)

思考は真っ白になり

冷や汗がどっと吹き出る

先程聞いた食べられるという単語が頭の中でグルグルと回る


ゆっくりと、騒いでいた2人は目をこちらへ向ける

フードを深く被って片目しか見えていないが、2人の緑の瞳と赤の瞳は、見ただけで相手を殺せるような眼力があった

殺される

そう覚悟した