担任に娘が退学する決断をしたと伝える。
受話器の向こうで、明らかに落胆した声が聞こえた。



何もしてあげられませんでした。何の力にもなれませんでした。ごめんなさい。



半年しか過ごしていない学校。先生だって生徒に対してそれほど思い入れもないだろうと思っていた。でも、とても辛そうな声だった。心配してたフリ、残念そうなフリとは思えない。


逆にこちらが申し訳ない気持ちだった。先生にそんな思いをさせてしまって。



後日、退学届を提出するため娘と学校へ行く。退学を決めてから髪を銀髪に近い色にしたりピアスを開けた。最後ぐらいちゃんとしようと、髪の毛に黒髪戻しスプレーをふりまいた。足りなくてまだらな頭になったが、そのまま学校へ。



入口で、担任と学年主任が待っていた。担任は笑顔で娘を出迎えてくれた。顔が見れて良かった、今日は少し調子がよさそうな顔で安心したよ!と娘の背中に手を回して教室へ入るよう促した。



学年主任から、力及ばずこのような決断をさせてしまい申し訳ありませんでしたと言われ私は驚いた。高校は義務教育ではない。入るのも辞めるのも自由だ。娘の退学は誰のせいでもない。謝る必要なんか全くないのに、学年主任も担任も娘を学校に復帰させられなかったのは自分達の力が足りなかったといわんばかりだった。


先生方の本心か学校のマニュアルかは知らないが、また私は申し訳ない気持ちだった。


少しだけ話をし、書類を書き校長に退学届を提出した。担任がクラスに置きっ放しだった娘の教科書などを紙袋にまとめておいてくれた。



お世話になりました。



最後の挨拶を交わす時に、それまで笑顔だった担任がポロポロと泣き出した。



力になれなくてごめんね。でも、あなたの周りには味方が沢山いるから、大丈夫だから。きっといつか元気になるから。ゆっくりでいいんだからね。何かあれば私はここにいるからいつでも連絡してきてね。できる事があれば協力するから。



その場にいる全員が泣いていた。最後に担任が


クラスのみんなに伝えておく事ある?


と娘に聞いた。娘は少し考えて


またね!ってだけ伝えて 笑


と笑顔で言った。担任も笑いながら了解した。



学年主任と担任は私達の姿が見えなくなるまで、外で見送ってくれた。私は何度か振り返りお辞儀をしたが、娘は無表情で1度も振り返らなかった。



先生方の姿が見えなくなった瞬間、娘の顔がグシャグシャに崩れる。大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちる。



なんであんないい人がいるのに、私学校行けなかったんだろう。なんで私はこんなにダメなんだろう。



帰りの車内で娘はずっと辛そうに泣いていた。私はあの時なんて声をかけたか覚えていない。頑張っても思い出せない。退学届を出した事で、学校というプレッシャーやストレスから解放されてくれればと、ただそれしか考えていなかった。