令和5年度行政書士試験を振り返り、

肢の切り方を再現しながら検証しています。

基礎知識問題は勉強方法が難しい分野ですが、

考え方によっては得点源になりえるものと確信します。

 

※正確な知識に基づいたものではなく、

あくまでもその当時の現場思考で解いたものであるので、

浅学非才の徒の戯言であることをご容赦願います。

 

以下の問54はまさに現場思考で正答を導き出せる問題だと思います。

 

 

問54 日本における行政のデジタル化に関する次のア~オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.RPAとはRobotic Process Automationの略で、ロボットの代行による作業の自動化、ないし導入するソフトウェア等を指すが、これにより人手不足の解消と職員の負担軽減を図ることが期待されている。 

イ.ガバメントクラウドとは、国の行政機関が、共通した仕様で行政サービスのシステムを整備できるクラウド基盤を指すが、セキュリティ上の理由から、地方自治体は利用できないものとされている。 

ウ.eLTAXとは、地方税について地方自治体が共同で運営するシステムであり、電子的な一つの窓口から各自治体への手続を実現しているが、国税については別のシステムとなっている。 

エ.LGWANとは、地方自治体や政府機関が機密性の高い情報伝達を行うために構築された閉鎖型のネットワークであり、自治体内や自治体間でのメールや掲示板の機能を持つ連絡ツールとしても活用されている。 

オ.オープンデータとは、二次利用が可能な公開データのことで、人手や労力・費用などのコストをかけずに多くの人が利用できるものであるが、自治体が保有する情報のオープンデータ化は禁止されている。 

1.ア・ウ
2.ア・オ
3.イ・エ
4.イ・オ
5.ウ・エ

 

 

解法

 

行政のデジタル化についての問題です。

アからオまで全く予備知識のない問題で、字面だけ追うと絶望的な気持ちになります。

 

でも別の角度から捉えると見えかたが変わってきます。

行政の効率化、合理化のためにデジタル化を推進するのですから、

 

「国は自分たちの行っているポジティブな政策を試験問題に出したがるので、
そういった肢が出たら正解の確率が高い」

 

という肢を切る際の基本的な考え方からすれば、

あえてネガティヴな内容が盛り込まれている肢より、

ポジティヴ志向な肢を優先的に選んだほうがよいと考えます。

そのように考えると、炙り出しのように正答「らしき」肢が浮かび上がってきます。

まず文末の表現に注目します。

 

ア.「期待されている」

 

現時点での否定でも肯定でもない、

未来の活躍を期待するポジティヴ志向な表現です。

妥当である可能性が高いと思います。

 

イ.「利用できないものとされている」

 

進歩から一歩後退するような後ろ向きな表現です。

また、地方よりも高いセキュリティが要求されるであろう国で利用されているのに、

地方では利用できないというのも変な話です。

妥当ではないとします。

 

ウ.「国税については別のシステムとなっている」

 

全肢中最も微妙な表現です。

そうであるかもしれないし、そうでないかもしれない。

保留して他の肢を見ます。

 

エ.「連絡ツールとしても活用されている」

 

汎用性が高く複数のニーズに対応できるということですね。

デジタル化を推進する意義が十分に示されている、

ポジティヴ志向な表現なので妥当とします。

 

オ.「禁止されている」

 

せっかくコストを削減できる便利なものであるのに、

自治体では禁止されているのではわざわざ紹介する必要がないような。

一番ネガティヴな肢なので妥当ではないとします。

 

イ、ウ、オを比較すると、

イとオが際立ってネガティヴなので4を選択→正答

 

 

作問者は全肢の用語の内容を、

受験生が承知している前提で出題しているようには思えません。

過去問を振り返っても同様の傾向の問題を散見するので、

むしろ今回のような解法をすることを望んでいるようにすら感じます。

 

この問題の正答率がどの程度のものだったのかは定かではありませんが、

落としてはいけない問題であるような気がします。