大阪府にある藤田美術館を訪れた。
前々から噂は耳にしており、いつか行ってみたいと思っていたのだが今回やっとその機会が得られた。
何でも世界に3つしかない曜変天目茶がみられるというのだ。
かの家康公を筆頭に多くの権力者が魅了され、大切に受け継がれてきた曜変天目茶碗。
中国南宋時代に作られた天目茶碗の中で最上級とされるその茶碗は焼き上げる過程で黒釉が変化して大小の斑紋が偶然現れ、それを取り囲むように鮮やかな採光が生じる。
その斑紋は紺の茶碗の中で星空のように輝き、器の中に宇宙が広がっているようだと評される、らしい。
電車を降り、ビルの間を抜けていくと真っ白でガラス張りの長方形の建物が現れた。この藤田美術館、実は明治の実業家藤田さんのコレクションを藤田さん宅で展示しているということだそうだ。
中に入ると木目の床で、右手には団子屋さん、左手奥には和室があり、展示室への入り口は金庫の扉をそのまま利用しているとのこと。
和のシンプルな雰囲気でありながらも重厚感と趣が感じられる素敵な美術館だった。
展示品は一つ一つスマートフォンから見られる解説付きでスタッフさんの裏話も載せられており、楽しく見られた。そしてお目当ての曜変天目茶碗は美術館中央に。
見た瞬間、茶碗の中に吸い込まれるような気がした。宇宙があった。小さな茶碗の中に壮大で無限の宇宙が見えた。見る方向によって青、紫、白と色とりどりに斑紋の周りが美しく光り、星にとどまりきらず、銀河のように輝いている。権力者たちがこぞって欲しがったわけだ。
小さいころに織田信長が領地の代わりに褒美として茶器を家臣に与えたという話を聞いて、
領地の方がうれしいに決まってるやん、茶器もらってどうするねん。
とか思っていた自分に言いたい。
茶器も素敵やん。
領地よりも広い、宇宙が手の中にある。
その器で茶を飲んだ家康はどんな気持ちになったんだろう、、
でもひょっとしたらもったいぶって実際には使わなかったのかもな、などいろいろと想像してみるのも楽しい。
入り口のお店でおいしく団子と抹茶をいただいて、帰り道に美術館から出てきた女の子二人組が、「先祖藤田さんだったらな、」と話しているのが聞こえてきた。
藤田さんの資産を考えると、自分がずいぶんとちっぽけなものに思えたのであった。