空腹は最高のスパイス。
キョーコからの厳しい食育が施されるまで、食欲中枢が麻痺したみたいな杜撰な食生活を送っていた蓮にはいまいち馴染みが薄いかのような例えだけれど……我慢に我慢を重ねて乗り越えた後のやっとなご褒美がとりわけ美味である事くらい解っている。
そのご褒美が、蓮が唯一に欲しいと渇望する愛しい相手であるならばことさらに。
蓮の目に、唐突に見えるようになったゲージ。
そんな不思議能力に芽生えてからずっと、待ち侘びてきたのだ、愛しい恋人の秘められた欲を示すそのゲージを確認するその瞬間を。
恋人として大人の関係を結び夜も重ね半同棲なまでになっても、未だに初々しいところを残しまくりなキョーコ。
帰宅した蓮を出迎えてくれた、そんな愛しい恋人の頭の上にひょこりと浮かんでいたゲージ。それを満たしていたピンク色の割合は、8〜9割の間と、意外にも蓮が予測していたよりもずっとずっと多い割合で……だ。
キョーコからの高い性的欲求を視覚したその瞬間、手洗いうがいや夕食なんてそっちのけの一直線でもって寝室のベッドへとキョーコを抱き上げて連れ込みたい!!なんて欲望でもって蓮の脳は染まるかのようだったのだ。
けれど……けれども、だ。
折角、恥ずかしがり屋で滅多に自分を欲しがってやくれない恋人のムラムラっぷりが見えるだなんて、美味しい能力に目覚めたのだ。
そうそうにバラすだなんて、勿体ないというもの。
存分に利用する為には、まだ蓮にもゲージが見えちゃってるとキョーコにバレる訳にはいかないではないかっ!?
だから、蓮は必死に。それはもう涙ぐましいまでの必死さでもってだ。
脳裏をチラつくような如何わしい破廉恥欲求から必死に意識を逸らし、いつも通りの敦賀蓮を演じつつ、夕食や入浴なんて日常をこなしてみせたのだ。
あの蓮の愛しい紅茶色の瞳が意味ありげにチラッチラッと蓮の頭上を窺ってはぽっと頬をかわいらしく染める度に、じりじりと揺らぐ欲望を腹の中で噛み殺しながら……。
そんな散々の「待て」を乗り越え、やっと……ようやっと、辿り着けた筈な愛しいキョーコとの甘く熱い秘め事の夜。
 
 
 
なのに……なのに、何故?
 
 
 
閉ざされたカーテンの細い隙間からこぼれた月明かりにうっすらと照らされた寝室。
暗がりを満たすのは、どちらのものともわからないような速い呼吸音と汗の香り。
「……ぁん、そこっ……も、だめぇ」
蓮が探りあて育てた性感帯なひとつの背中へのキスひとつで、途端に高く跳ねる嬌声。
「ん、ダメ?どうして……気持ちいい、だろう?」
ぐじゅっと、生々しい水音を鳴らしながら抉るように奥へと挿し込んで。
イヤイヤとうつ伏せた頭を振るう恋人の耳ともへと、幼な子を諭すみたいに問いを投げる夜にかすれたみたいな低い声。どこまでも甘ったるくも意地悪げだ。
ぞわりと、恋人の白い背中がわななきしがみつくみたいにシーツを掻く細い指までもが、蓮の目には恋人へ自らが与えている深い快楽を訴えているみたいで堪らなかった。
「ね……も、もぅ、ぎゅっ……ぎゅぅって、して?」
下肢だけを高くかかげたうつ伏せな身体を捻るようにして、キスを強請るみたいにピンク色の下を唇からチラつかせながらキョーコが強請る。
幼い頃に親からの絶対の愛情とぬくもりを与えられていなかのた反動か……快楽の頂きを数度越えて理性の壁の崩壊したキョーコは、高みに追いやられる前にぎゅっと抱き合いたいと小さな子どもみたいに強請るのが癖だった。
きゅうきゅうと蓮の熱を締め上げる恋人の内壁に、背骨を駆け上がり思わず吐き出してしまいそうな欲を奥歯で噛み殺しながらも、かわいい恋人の願いを叶え、お互いに抱き合えるように体勢を変えてゆく男の腕。
「あっ……やぁん、ぁあっ!」
あぐらをかいた男の腰の上へと抱き上げられ、高く甘く尾を引くみたいにあがる嬌声。
ぎゅぅっと、自分のものだと語るみたいに背中へと回された細い腕と立てられた爪。
総て。そう、総てが蓮をどうしてくれようか?って程に甘く溺れさせ酔わせるみたいなかわいい反応で。
夜を重ね、蓮が見出し開発したキョーコの快いところへと意識して刺激を送る。キョーコの快いように快いように。ただ、キョーコへと深い悦楽を差し出すかのように。
キョーコの高い声も震える身体も甘い汗の香り、痛みすら感じるくらに背中に立てられた爪先……蓮と同じように恋人として、男として、キョーコが求めてくれているのだと、そう物語るのに。
それなのに……
 
 
 
どうして?と、愛しいキョーコへと吐き出してしまいそうな疑問の声を、蓮は奥歯をぐっと噛んで喉奥へと殺していた。
 
 
 
 
 
 
薄暗いベッドの上、蓮の目に映るのは、恋人の愛しい啼き顔と、栗色の髪の上にあるゲージ。
そこに見える性的な欲求を表した筈のピンク色。蓮を出迎えてくれたその時をピークから寝室へと誘ったのをきっかけかのように、減少の一途を辿り続け……
今ではもはやほんのちょっぴりなゲージの1割だけが残るまでに下がり切ってしまっていたのだから。
 
 
 
 
✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄
 
 

これっくらいなら、限定いかずにいけるかしらー?どうかしらー?
_(:3 」∠)_


 
意外や意外、ピンク度数高めだったキョコちゃんのゲージに舞い上がって……
それなのに、いよいよいい雰囲気?なところから右肩下がりに下降しちゃうピンク色。
どうして?が言い出せなくて内心おろおろ蓮くんだが、どうなるどうする?
ァ,、'`( ꒪Д꒪),、'`'`,、
 
 
 
次回、はてさて、そのゲージが示す意味とは?そして、後編でちゃんと終われるのかっ!?
((((;゚Д゚)))))))
 
 
 
↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。

 
web拍手 by FC2