猫木の変な挑戦『いろんな敦賀さんを書いてみよう。』
困惑混沌の朝。から派生する続きのひとつとなっております。


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 バチッ!!って、効果音がしたんじゃないかな?ってくらいばっちりと、目と目が合った。
見開かれた黒い瞳。
……す……すごい顔で固まってらっしゃる。
っっっっっっ………………
息を吸うことがさえ躊躇うみたいな緊迫した空気。
でも、でも……何か…………何か、言わないと……何か
どうにか昨日のお酒の所為な夜の過ちをなかった事にしてしまえる魔法のような何か!?なんて、ぜんっぜん浮かびませんっ!!
狭い私のベッドの上、お見合いみたいに合ったままな視線を逸らす事さえ出来ないまま。
……い、息が苦しくなってきちゃった。
苦しさから、すぅっと引き攣るみたいな喉が空気を吸い込んだ……その瞬間だった。
重ったるい沈黙を裂くみたいに高らかに音が……





きゅるきゅるきゅるきゅるるるるる〜




私のおなかから…………
えぇ、そりゃもう見事なる大音量でもってお腹が鳴りましたとも。
頬どころか首から上が焼けたみたいに熱い。
なんたってこんな時にっ!!穴が有ったら入りたいっていうか今すぐに大穴掘って地中奥深くに埋まってしまいたい!
う゛ーーーー、もう恥ずかしくって、お腹を抑えてシーツの上に顔を埋めて身を縮めてると……
クスクスって笑い声とポンポンと頭を撫でる大きな手。
「とりあえず、朝ごはんにしようか?台所借りていい?」
普通の……いつも通りな敦賀さんの声。
「そんなっ!私が作りま……っいっつぅぅぅ」
身体を起こした途端にあちこちに走る激しい痛み……特に下腹部が痛くって悲鳴を噛み殺しながら再びシーツの上に倒れてしまう。
「ごめんね?俺のせいで……。俺がするから、最上さんはゆっくり休んでて、ね?」
さらりと髪を撫でた後、ギッと軋む音がして敦賀さんがベッドから降りて行くのが分かった。
服を拾って着ているんだろう衣擦れの音の後、ぺたぺたと遠去かる足音。
ひとり残された私。
ジンジンと鈍く響く身体の痛みが、敦賀さんとの昨日の夜が現実だったと突き付けているみたい。
隠れ遊び人の戯れを受け流す大人の女性どころか、腹の音を盛大にならすなんて……子供っぽいどころじゃない。女としてどうなの……
敦賀さん……こんな私との夜なんてなかった事にしたい筈よね。
シーツに残った敦賀さんの残り香。セラピーな香りの筈なのに泣きたくなってきた。
我が家な台所で敦賀さんがワイルドゥに制作してらっしゃるだろう朝ごはん。過去のオムライスな思い出から予測されるのはバケモノクラスな味とボリューム。
マウいごはんを平らげるって苦行と引き換えに…………もう後輩としてそばにいられなくても、せめて軽蔑したとか仕事以外では二度顔も見たくないとかはなしにしてくださらないかしら?
なんて都合のいい事を考えながら、軋むみたいなだる重い身体でのろのろと服を身に付けた。
崇拝し尊敬する先輩に朝ごはんの世話までさせて、いつまでも寝室に籠っている訳にもいくまい。
私は、覚悟を決めるようにすぅと深く息を吸うと寝室のドアを開けたのだった。






私を待ち受けていたのは、神さまから愛されたもうた美貌にどこかそわそわした気配をさせる敦賀さんと……
焦げ目のひとつもない綺麗な黄色のオムレツにカリカリなベーコンとほうれん草のソテー、彩りのいいサラダとコンソメのスープ。それと、ふんわりといい香りのするフレンチトーストに冷えたミルク。
予想を裏切るみたいな、絵に描いたような朝食プレート。
さぁさぁと敦賀さんに勧められて、恐る恐るにスプーンを口に運ぶ。
「……美味しい。」
思わずにこぼれ落ちた言葉。たったひとくちでさえ、不味いの言葉さえ上手く発せられなくなる威力のオリジナリティに富んだファンタスティックなあのオムライスの味とは全く違っていて……




「最上さんっ!?」




慌てた様子で敦賀さんが私を呼ぶ声に、やっと……
自分がぼろぼろと涙を流してしまっている事に気が付いた。





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まさかの料理上手蓮さん。
(*ΦωΦ)
キョコちゃんに家庭的な男アピールで点数稼ぐ筈が………



次回、キョコちゃんの涙の訳やいかに?



↓拍手ボタンのポエムを新しく『新機能搭載。』へと入れ替えました。良かったら覗いてみてくださいまし。
前のワルツ、我ながらなかなかにかわいく書けたんじゃないかなとお気に入りでした。書いたきっかけは職場で「社交ダンスって高校で習いませんでした?」って言ったら、猫木以外の全員からそんな授業ねーよ!って突っ込まれたのがはじましでしたとさ。
なかったですか?社交ダンスな選択授業。


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。

 


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