「苦っ……じゃなくて、ぉ美味し〜ぃ」
 
 
 
取ってつけたように付け足された美味を賛辞する言葉は発した本人であるキョーコにも分かるほどに嘘臭い無理矢理感がありありと滲んでいた。
カイン兄妹生活の時にも、ホテルの冷蔵庫に詰め込まれていたメーカーのビール。慣れない炭酸の刺激と苦味。それが美味しいと思えたなら…………少しは大人に近づけるかと思えたのに
 
 
 
 
 
切れ長の目をまんまると見開いてパチパチと瞬きを繰り返す、そんな敦賀蓮らしくない鳩が豆鉄砲を食ったような表情を晒してしまっている蓮。
だって、そうであろう?
最愛の想い人の中から存在を抹消される恐れや彼女に搭載された恋愛に関する見事な曲解思考回路に振り回されつつも、やっと、ようやっと口説き落とした愛しい恋人の口から出た言葉。重量級な想いの自覚がある蓮としては、自分がキョーコへ言う事はあってもキョーコに言われようなど微塵も想像もしてやいなかったのだから。…………そもそも、別れ話どころか別れの気配もないつもりでいたのだ。
寝耳に水な勢いで飛び込んで来た別れない宣言にどう反応したものかと固まっている蓮など知らぬげに、初めてのアルコールにノンストップ状態のキョーコは続けるのだった。
「ぃ……今さらっ!今さら、妹とか子どもや小動物に向けての愛情と勘違いしてたって気付いたとしてもっ!もぅ遅いんですからねっ!!絶対に、別れてなんてあげません!!」
だなどと。そのままうにゅっと涙まで滲ませたキョーコは、蓮が密かに触りたいと熱望するなだらかな胸の膨らみのはじまりあたりをパシパシと叩き出す。
「そりゃ、色気のないつるぺたーんですよ?もりもりキャベツ食べたって浴びるように豆乳飲んだってサプリだって胸が育つ育乳ブラだって何種類も試しても……ちっともおっきくなんてなりませんでしたけどっ」
ぺしょぺしょぱみぱみふにふにと、わざとやってる?煽ってる?って程に自らの胸を強調するかのよに触りまくっている目の前のキョーコから目も離せないまま、プチパニックに陥る蓮の思考。
へ?え?ボール一杯のキャベツのサラダと最近いつも飲んでた豆乳はマイブームじゃなかったの?サプリ?育乳?それは、俺に任せてくれたら…………いや、そんな事よりもっ!!
「勘違いじゃないから!妹とか子どもとか小動物とかへの愛情なんかじゃないっ!!」
やっと辿り着いた恋人の座、今さらに妹や後輩なんかの距離に逆戻りされてたまるものかっ!と、蓮は全力主張するのだけれど
「嘘です!敦賀しゃんの嘘付きぃ……だって、だってぇ…」
どんどんと順調に酔いが回っているらしきキョーコの呂律。泣上戸なのか、ぐじゅりっと鼻を鳴らして泣き声混じりにぐしぐしと続けるのだった。
「この前のデートもその前もその前のお家デートだって……ぜんっぜん、楽しそうじゃなかったじゃないれすか!?だめ息ばっかりで……そわそわして落ち着きなくって何か言いたそぅで……どうせ、どうせっ!どうやっれ別れ話を切り出そうかとか…」
自分の言葉に悲しくなったのかキョーコの大きな瞳からはぼろぼろと涙が頬へとこぼれ落ちている。
キョーコの言葉に心当たりがあったらしき蓮。珍しくもオロオロと狼狽えていたのだが、キョーコの涙に突き動かされたようにキョーコの肩を両手で捕まえて声を上げたのだった。
「違うっ!!俺は、ただっ…………」
 
 
 
 
強く大きな蓮の声に弾かれたように、沈み込んでいたマイナス志向の渦から現実へと視界を戻す。
キョーコの目の前にいるのは、常に優雅で洗礼された紳士っぽさなどない必死さの滲む顔をした男。
言葉を詰まらせた蓮は、ふるっと長い瞼を震わせるとみるみると顔を赤く染め……そんな蓮にぱちくりと目を丸くしているキョーコへと、非常にバツが悪そうに白状したのだった。
 
 
 
 
 
「ただ…………キョーコちゃんと、はじめてのキスがしたくて」
 
 
 
 
 
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ほんっと、何だこの話?あ……貴女様よりのリクで書いてるつもりですぅ。←かけ離れてってる自覚はあるらしい。
なんともねっちり読みにくい文章で申し訳ないです。大丈夫っすか?後編までお付き合いしてくださる奇特な方ははたしているのだろうか……
_:(´ཀ`」 ∠):
 
 
 
お付き合いもデートもしてるけど、キスはまだ?なおふたり?
(OvO)?
 
 
 
次回、はじめてのちゅー♡君とちゅーぅ、うふふふふ?
 
 
 
↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。

 


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