油断してっと置いてくぜっ!!
そんな勢いのみにて突き進んだ成れの果てな中編にございまする。
_(:3」z)_



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心底……思ってしまうのであります。
人間、慣れとは恐ろしいものだと。あ、自分、人間でなく怨キョなのではありますが…………
親ビンのお仕事先のテレビ局にて憎っくき怨敵と鉢合わせたのをきっかけに、迷子なはぐれ怨キョと成り果て、その上に魔界人にまで狙われ追われるなんて窮地へと差し出された手。
我々怨キョを何体も干からび浄化させてしまう能力の保持者ではあるが……まぁ、敦賀氏に我々怨キョへの害意があっての事ではないのだし。
それに、親ビンがロケに出ている先は長距離に渡っての移動力も土地勘などない我が身には、遠く遠く遥かに彼方。
またあの魔界人の手に囚われて親ビンへの脅迫の材料となるよりかは…………
そう考えて、護ってくださると言う敦賀氏に頭を下げたのだった。
そんなこんなで敦賀氏の庇護下での生活ももはや36時間と少し。
とかく!慣れとはげにも恐ろしきものだ……などと、考えてしまっている現在地はその敦賀氏の頭の上であります。
「ずっと飛んでると疲れちゃうだろう?」
と、そうおっしゃる敦賀氏の手によってジャケット胸もとのポケットか此処かな二択なまでに、何故か定位置と化されてしまった感さえある艶々の黒髪の上。あぁ、お風呂上がり洗いたてのサラサラうっとりな撫で心地…………さわりさわり、あとちょっと。あと20秒したらちゃんと自力で漂うから……




って、なんか恐ろしく順応してしまってないですかっ!?




あれ?なんか……なんだかこのままではいけない気がするのですよ!
最初はあの恐ろしい殺人光線スマイルに干上がるかと思っていたはずが……いつの間に何故にやらこんな事に!?
気が付けば、どうせなら一緒にいたいだとか謎な事を言う方と一緒に事務所の稼ぎ頭なトップ俳優兼モデルの多忙なるスケジュールに付き添い、仕事ぶりを見学したり油断するとあのメガネマネージャー氏がいないからと疎か杜撰になる敦賀氏の食生活にいちいちと敦賀氏の耳やら指やらを引っ張って食べろとお小言を零していたり……たまーに敦賀氏から滲み出す黒い感情にウキウキしたりな、24時間べったり密着生活だったりです。
「?……どこ行くの、キョーコ?」
このままでは堕落してしまうっ!と、禁断の麻薬かの如く癖になりそうなさらふわな絹糸みたいな黒髪からフワリと宙へと浮かび上がると、我々怨キョには重さなんてものは皆無であるにも関わらずに瞬時に気付かれたのかそう呼ばれてしまった。
そう、キョーコ呼びで……なのである。
「君のことはなんて呼べはいいかな?」
そう問われて、怨キョという一族の者で、個々に識別される名前などない。だから、怨キョまたは敦賀氏の好きに呼べばいいと答えた結果……何故か、敦賀氏嬉々としてのキョーコ呼びだ。
正直なところ……その低音でキョーコと呼ばれる度に、心臓(あるのかな?)はドコドコと痛いくらいに煩いし顔が熱くて崩壊してそうでゴロゴロともんどり打ちたくて堪らなくなるのでやめてほしいのだが、好きに呼んでいいんだろ?とニッコリ笑顔で凄まれて押し切られるだけで…………
「おいで。一緒に寝よう?」
ふわりと、身体を包み込む大きな手のひら。
優しく連れて行かれた先は敦賀氏の寝室の広大過ぎるにも程があるベッドの上。
横たわる敦賀氏の隣。
いやいやっ!?と、昨晩に敦賀氏が用意してくれたゲストルームの寝床(小物入れとやたら高価そうなふかふかマフラーで制作された即席ベッド)に飛んで行こうとするんだけど
「おやすみ、キョーコ」
ひぃぃぃぃ、全力全開フルパワーではないとはいえ神々殺人光線すまいるぅぅぅ!!
きゅぅ〜っと、力なくへなへなになった背中をあやすみたいに撫でる大きな手。
「…………だいじょうぶ。さみしくないよ?」
朝から晩までぎゅうぎゅうに詰まった仕事をこなしていた敦賀氏。トロトロと半分くらい眠りに溶けた低い声。
……………………昨日、敦賀氏におやすみと挨拶をされてゲストルームで眠っていたけれど、夜中に目が覚めてしまったんです。
真っ暗でシーンと静まり返った見覚えのない部屋。親ビンも仲間たちも……誰もいなくて。
どうしても、さみしくて…………だって、産まれてからずっとみんなと一緒だったのに、ひとりぼっちで。もう、このまま……親ビンにも、みんなにも会えないんじゃないかって考えるとたまらなく怖くなって。
真っ暗な中、ひとりすんすんと泣いていると、敦賀氏が来てくれて…………
大丈夫だよって、一緒に眠ってくれたんだった。
でも、今夜はひとりで大丈夫。ちゃんと用意してもらった寝床で寝ますよ。





スゥスゥと聞こえてくる寝息。そろりと瞼を開ければ、そばにある寝顔。
いつもならひどく大人びている美貌。けど、長い睫毛が伏せられている今は胸がキュゥって締め付けられる程にかわいく見えてしまう。
あったかくて大きな手のひらと親ビンがセラピーと呼ぶいい香り。
敦賀氏が眠ったから、今のうちに………ゲストルームに行かなきゃって考えるのに頭の中がてろてろに溶けて、瞼が重い…………




もうちょっと……もうちょっとだけなら。ここに居てもいいよね?
大丈夫。明日には親ビンも帰って来るって……敦賀氏がそういって……たもん……





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怨キョちゃんと一緒でご機嫌な蓮さんとうっかり順応して懐いちゃってる怨キョちゃんとか……かわいくないっすかね?
(「゚Д゚)「


次回、親ビンと感動?の再会。そして、明かされる〇〇〇とは!?
(*ΦωΦ)まぁ、本当に後編で纏められるのかさえ不明な、いつもののーぷらんっぷりなんですけどね☆



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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