大陸一の領土と力を誇るヒズリの皇国、その領民達は皇帝の結婚を前に祝いに賑わっていた。
街には祝いの旗がたなびき、物流の要となるよう整備された街道と辻には祝いの花が飾られていた。
そんなヒズリの国内へと入ってから、花嫁の腹違いの兄であるアカトキの国王はその整った顔をあからさまなまでに顰めて不機嫌な様子を隠そうともしていなかった。
ショーをさておきアカトキより広大な国を統治する賢帝と謳われる男、不気味な黒の仮面越しにでもすかした顔をした気に食わぬ男の結婚をわざわざ祝いにヒズリへ足を運ばせられている現状がショーの癪に触る。
こうなったのも全部、身分も低く地味で見栄えもしない癖にキョーコが使えねぇから…………と、腹のなかでぶちぶちと恨み言を吐いていたのだった。





そんなアカトキの若王の怒りは、ヒズリの皇都にある皇帝の居城の長い重厚な石造りの廊下でとある男と顔を合わせた事により更に火を注がれる事となった。
「やぁ、これはこれはアカトキの王よ。」
にこやかにそう語りかけて来たは、アカトキとは領地を接してはいない西よりの海を抱く国であるキジマの王子だ。
キジマの貴色である深い海の色の肩布にフロック、鍛えられた体躯と海の民を思わせる少し焼けた肌をした、世の乙女たちからも人気を集める伊達男だ。
アカトキの王であるショーに膝をつく必要のない男。
「しかし……意外でしたな。」
身長差から、ほんの少しだけ見下げるようになる目線をしてキジマはそうショーへと言った。
なんの話だ?と、決してにこやかとは言えぬ顔にそう浮かべるショー。
「いや、確か貴国では兄妹での婚姻も推奨されていたはずなのに、あんなにも美しい妹君をヒズリが相手とはいえ花嫁へ出すなんて思ってもみなかったのでね。」
女好きと噂名高いショーが、あの美しい美姫を自分のモノにしないでいたなんて……とそうはっきりと裏で匂わせるように。
はぁ?と、普段であればひとの目を意識して崩さぬように努めていた自慢の顔を盛大に歪ませたショー。
「ヒズリの皇帝が掌中の珠と夢中になるのも頷くよう……髪を結い上げてさえあれほどの美姫だ。隣に獰猛な番犬さえいなかったら、是非にもお近づきになりたいところなドストライク。」
美しい女性であれば口説くのが礼儀。乙女に甘い夢を見させてくれる色男だとそんな浮き名を流しているキジマが諸手を挙げて絶賛し美しいと褒めそやす……見窄らしい末の姫であるはずの腹違いの妹であるキョーコをだ。
兄弟を禁忌とするもなし、なんの障害もなく自分のものと出来る立場であったにも関わらず呆気なくもやすやすと手離したショーを男としては信じられないと、そうとでもいわんがばかりに。
そんな筈ないだろうと、ショーは衝撃を隠せないでいた。
ほんの数年ほど前にアカトキの国へ遊学に訪れていたことのあるキジマ。人なつこい笑顔と押せ押せなアピールを後宮の王の娘たちへも撒き散らしていたのだ。
当然、ショーの妻のひとりとなったミモリ姫や情婦のショーコらとの面識もある。そのキジマが、見たこともないほどの美姫だとうっとりと讃えているのだ。
それこそ、ミモリやショーコよりずっと比べるまでもなく……誰にも求められず行く当てのなかった末の姫の方が愛らしくあるといわんがばかりに、まるでキョーコに恋い焦がれているかのようなまでに熱心に。
あり得ないだろ、目がおかしくなったんじゃねぇか?だって、キョーコだぞ?あの地味で色気のない…………そんな思考を傍目にも感じ取れる程にぐるぐると巡らせているショー。
側に立っていたキジマの瞳におとしむ白い色合いが浮かんでいる事にさえ気付かぬままで。
気が付けば、そのキジマの姿もなく案内されるがままに花嫁の祖国からの貴賓であるショーの為に整えられた客室へと辿り着いていた。
ヒズリの国の豊かさを感じさせる豪奢な室内。歓迎の意を示す花と銀の器に盛られたみずみずしい果実、曇りひとつないクーラーに冷やされたボトル。
ほぅっと側近の者たちがおもわずにこぼした感嘆の息さえショーの苛立ちを煽るのだけれど、目に見えてみっともなくジタバタと当たり散らす事も出来ずに鬱憤を募らせたショーは腹の中で思う。
この俺がこんな思いをしなきゃいけないのもあれもこれも全部…………キョーコが『毒喰らい』を始末しないでいた所為だ。
と、キョーコがショーの為に尽くすのが当たり前だとそう疑いもしない身勝手な男。
きっと今ショーの前にキョーコが居たならば乱暴にその怒りを怒鳴り散らしていたのだろう。






そんな苛立ちを腹に溜め込むかのようなアカトキの国の王と、その腹違いの妹である『死にたがり姫』とが再開を果たしたのはその夜に開かれた祝いの宴でのことだった。







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うーん、この話別にいらなかったかなぁ……



貴島くんに見る目ないね的な目で見られる松くんってのをちょっと書いてみたかっただけでございまする。いまいち盛り上がりどころなくてごめんなされぃ。
_:(´ཀ`」 ∠):



次回、松くん魂啜りと出会う☆←のーぷらんです。



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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