高い鉄柵によって隔離されている皇帝の毒園。その中央部に位置するガゼボのカウチに座るひとりの姫。
顔を隠すように俯き、自分がいかに誰からも求められなかった姫であるか、そして……身代わりのように寄越された花嫁であったのだと、小さな小さなつぶやくような声でそう言葉にしてゆくキョーコ。
キョーコの頭に浮かび上がるのは、キョーコと母の違う妹姫。キョーコとほんの10日違いで産まれ、キョーコと違って母に愛され宮女たちに存分に甘えてわがままを言って無邪気に笑っていたもうひとりの末の姫。
『ショー様はミモリのものよ!ミモリは兄様の為ならなんだって出来るんだからっ……』
アカトキの国を出る前に、キョーコが最後に会った妹姫はどこか思い詰めたような瞳をしてキョーコへそう叫んでいた。
まだ見た目にはわからぬ薄い腹を抱いて、威嚇するかのように……。
本来ならおくられる筈でなかったキョーコがヒズリの皇国へとやって来た顛末を語り終えて、皇帝の毒園に沈黙が落ちた。
話し終えてもクオンからは何の反応もないままで。
キョーコが続く沈黙に居心地が悪くなって来た頃だった、急にクオンの頭がキョーコの肩の上へ倒れて来たのは。
さらりとキョーコの頬をくすぐった後に肩に軽く乗せらている金色の頭に、ビクッと身体を震わせたキョーコ。どうすればいいかからないままのキョーコが硬直したように身を硬くしてグルグルと思考を彷徨わせていると……
「……はぁぁぁぁぁぁぁ」
キョーコの肩の上で、大きな大きな長いため息が吐き出された。
「怪しまれてもいいからちゃんと名指しで申し込めば…………いや、いっそあの時ヤシロが止めるを振り切ってでも俺がアカトキに直接姫を迎えに行けてれば……」
キョーコの肩に乗ったままのクオンの頭からぼそぼそブツブツと聞こえてくるつぶやき。実際に実行に移していたとすれば、キョーコの祖国は蜂の巣をつついたような騒ぎなどではすまない大混乱に陥っていただろうそんなことをだ。
「えと……あの、陛下?」
心臓に悪いような体勢にいるクオンへと、キョーコの困惑しきった声が落ちてくる。
少し名残惜しいなんて思いながらもキョーコの肩から額を上げてクオンはキョーコの頬を指で撫でながら告げる。
「……アカトキの王の女癖が悪くて良かった。」
言葉の上だけを取れば、そのアカトキの王を兄として持つキョーコとしてはどう返して良いのか困るような事を。
だが、柔らかくキョーコを見つめる翠色の瞳は、アカトキの勘違いだろうがなんであろうがクオンのもとへ花嫁として来てくれたのがキョーコで良かったとそう語るかのようで……
かぁっとキョーコの頬が真っ赤に染まる。
そんな『死にたがり姫』の今までにない可愛らしい反応にクオンは眼を眇めて笑う。
何故かクオンの笑顔を向けられたのキョーコはまるで眩しい光でも見たかのようにその瞼をぎゅっと閉じてしまったのだけど。
クオンはそんなどこか怯えたようなキョーコに構わず可愛くて仕方がないとばかりにそのすべらかな頬に撫で撫でと指を滑らせて、そうやってひとりきりキョーコを愛でてからクオンは乞うようにその願いを口にしたのだ。
「我が花嫁の姫……どうか先程の願いを撤回してくれないだろうか」
キョーコがクオンへと跪き願った、キョーコの首を落とせという願いを撤回してほしいと。
クオンの願いに、キョーコは閉じていた瞼を開け…………
その紅茶色の瞳に酷く哀しげな色を浮かべて唇を噛んだ。
そして、ただ黙ったまま小さく、でも確かに首を左右に振るってみせたのだった。
クオンの願いを叶えることはできないと、クオンへ伝える為に。
クオンが心から求めた花嫁がキョーコであったとしても…………
キョーコは、以前かわらずに『死にたがりの姫』のままなのだと。
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| 壁 |д・)……ほかに好きなひとがいる癖にな誤解を解いてもまだ死にたがり姫のままなキョコさん。
はて、どうしてでしょね?
次回☆なでなで触って喜んでただろうクオンくんによる取り調べと説得に言いくるめ。乞うご期待ください。←嘘です。まだ1文字たりとも書いてないので、どうなるかさっぱり不明でっす!!
_(:3 」∠)_