パタパタと近付いてくる草の上にを走る軽い足音にクオンが閉じていた瞼を開けると、ぐわんぐわんと揺れて気持ちの悪い視界が広がっていた。
「レンさま、大丈夫?……ごめんなさい、ごめん…なさい」
幼い姫の小さな手でクオンの額に乗せられた濡れてひんやりと冷たいハンカチーフ。
大きな紅茶色の瞳からぼろぼろと涙を零して倒れたクオンへ謝っている女の子。
一国の王が棲まう後宮、その庭園に『毒』を持つ実をつける木。通常なら有り得ぬ筈だ。
何故ならば……王族貴族の暗殺となれば外傷の残らぬ『毒殺』が多く、『毒』を恐れ遠去ける筈なのだから。
ならば何故、アカトキの庭園に『毒』をもつ実をつけるピコの木があるのかといえば……
その実の放つ甘い香りが貴婦人がたの香水やトワレの材料とされる事と、アカトキの民であればその実に『毒』がある事などほんの幼子だろうと知っている事。
そして、ピコの『毒』で死のうとするならばピコの木3本分になる全ての実を食べても足りないと言われる程なのに、ほんのひとつの実を食べ切る前に誰もが倒れてしまうからだ。
そう、今のクオンのように。
けろりと当たり前のようにピコの実を食べていた姫。
後宮の庭園ならば、王の妃や子の為にもちろん『毒』などない果樹園がある筈なのに……そう疑問を持ったクオンが聞けば
「うん、でも……キョーコは食べちゃダメって怒られるの。キョーコ、末姫だから。」
と、そう自分がアカトキの王の末子であるとクオンに教えてくれたのだった。
後宮で蔑ろにされている末の姫だと。
その日も、キョーコの為の昼食のプレートはキョーコへと運ばれる前に姉姫の意地悪でひっくり返されてダメにされてしまったのだった。
王にも母にさえ、顧みられぬ身分の低い末の姫。キョーコの為に新しく昼食を……などしてくれる宮女もなく、空腹を抱えたキョーコはひっそりと人の目に付きにくいこの場所にあるピコの実を食べに来ていたのだった、いつものように。
クオンとで王族に連なる者として、少量づつ『毒』を取り耐性をつける話を聞いた事があったが……この小さな姫はただ生きる為に『毒』を食んでいたのだ。
そして、本当にただ純粋にクオンを思ってピコの実の半分を差し出していたのだと
「ごめん、叩いたりして…………それ、やっぱり貰ってもいい?」
キョーコへと謝り、先程クオンが叩き落としたピコの実を受け取ると袖で実の皮を磨き、シャクッと齧りついたのだった。
にっこりと嬉しそうに笑ってくれる優しい姫がかわいくて……自分より小さなキョーコが平気なのだからと、つい同じようにピコの実を食べてしまっていたクオン。
唇の端が痺れて来たかと思った時には、視界が歪み立っていられなくなっていたのだった。
倒れたクオンを心配したキョーコはすぐに人を呼びに行こうとしたのだけど、そんなキョーコを止めたのはクオンだった。
きっと、人に見つかればヒズリからの貴賓であるレンに『毒』を盛ったと、この小さな姫が責められるだろうから…………
それにしても、叔父王から執拗に送られて悪意から姿と名前さえ変えてまで逃れて来た先で、自分から『毒』を食べて倒れているだなんて……
可笑しくなったクオンは思わず笑ってしまう。
まだ、グルグルと回る視界は気持ちが悪いけれど自分を心配そうに覗き込むキョーコの泣き顔を見上げ
「大丈夫だよ、キョーコ姫。」
この小さな姫に泣いていてほしくないと、クオンはキョーコへと微笑んでみせたのだ。
祖国で無くしていた心からの柔らかな笑顔を、久しぶりに取り戻して。
それが、幼いキョーコとレンと名乗っていたクオンの他の誰も知ることのないはじめての出逢いだった。
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油断してっと振り落とされるぜ☆のんすとっぷ更新中、猫木めにてござる。←?
ただたんに、書いたその場の勢いで出さないと全部書き直したくてしなたがなくて進めないやーつです。
(*ΦωΦ)
割とベッタベタなクオンくんとキョコさんとの出逢い。
たぶん、次あたりから過去から現在のクオンくんとキョコさんへと移り変わるかと……
がんばって口説いておくれよ、毒喰らーい。
_(:3」z)_←のーぷらん
| 壁 |д・)
そいや…………
本誌の方で何やらざわざわしている様子をこそりと把握してたりしやす。
うーむ。見てないのでなんともですが、先生の裏切りっぷりを信じてます。