今まで、誰とも会う事のなかったその場所にいたひとりの男の子。
ぽつんとひとりで立つその男の子の綺麗な綺麗な深い黒色の瞳が悲しそうで……
幼いキョーコにとってぽんっと頭に浮かぶ悲しくて辛い事など、母親がキョーコを見ると嫌そうに顔を歪めて一緒にいてくれない事とお腹がすく事くらいのこと。
だから、キョーコは腕に抱えていたふたつのピコの実のひとつを彼に差し出したのだ。けれど
「…………いらない。」
小さな小さな硬く拒絶の色を含んだ冷たい声で吐き出された声。
「え……でも、だって…」
はじめて会ったその男の子にどうしてもそんな辛そうな顔をしていてほしくなかったキョーコが、ピコの実を差し出したまま言葉を選んでいると
「……いらないって言ってるだろっ!」
パシッと、乾いた音がした。草の上に転がるつやりと艶めく赤い果実。
幼いキョーコの小さな手に走る痛み。
「っぅ……ご、ごめん…なさい。」
幼い姫の瞳には涙の膜が滲む。クオンの足元に転がった赤い実をしゃがみこみ拾い上げた小さな女の子。
クオンへ向けた肩と背中は震え、泣き出すのを必死に我慢しているのだろう喉から絞り出すような声も涙声だ。
そんなキョーコの痛ましい様子にも、クオンの心は凍りついたように微塵も動かなかったのだった。





甘い香りのするつやめく赤い果実をつけた木。
このアカトキの国へ入ってからちらほらと目に付くようにようになっていたその木を、クオンは4頭立ての馬車の窓からぼんやりと見ていた、その時だ
「レン、あの木の果実を食べてはいけないよ?美味しそうな色と香りをしているけれどあの実は……『毒』だからね。」
外遊に同行しているコウキがクオンへそう教えたのは……。




ぐずっと鼻を啜る音と、ザクリザクリと力なく草を踏む音が遠ざかってゆく。
そんな中、クオンの耳にシャクッと届いた音にクオンは思わずに振り返る。
瑞々しい果実を齧る音だ。
「何をして……!?」
クオンのその声に、クオンの前から去ろうとしていた幼い姫が振り返る。一口、小さく齧られて赤い皮から白い果肉を見せているピコの実を片手に持ったままで。
異国の幼い姫。腕に抱えたふたつの実を半分こにするかのように、その小さな手でクオンへと差し出されていた赤い実。
髪と瞳の色を変え仮初めの名前を名乗り、遠く国を離れ叔父の手から逃れてさえ……こんな幼い女の子もクオンへとクオンの死を願って『毒』を差し向けるのだとそう思って、小さな白いその手を叩き拒んだ……ただ、それだけだった筈が、彼女がその果実を食んでいる。
『毒』のまわりも速いだろう見るからにクオンより年下のその小さな身体でだ。
理解出来ないと見開かれたクオンの黒い瞳と涙で潤んだ紅茶色をしたキョーコの瞳が合った時、キュロロロロロロ、とそんな不思議な音がした。
鳥の鳴き声か?とクオンは一瞬そう考えたが、目の前の小さな姫は真っ赤な顔をしてその薄い腹を抑えるのが見えてやっと解った。
この小さな姫の腹が空腹を訴えて鳴っていたのだと。
「ぇと……あのね?ここがしびしびして来て、目がチカチカする前にやめるの。でも、少しずつたくさん食べれるようになるし、甘くて美味しいのよ?」
盛大に鳴った腹の音が余程恥ずかしかったのか、頬を真っ赤にしたままのキョーコが必死に誤魔化すように語る。
自分の唇の端を指差しながら、そこまでピコの実の毒で痺れたらそこで食べるのをやめるのだと、そう。





クオンへと辛そうな顔をしてほしくないと、彼女が差し出したつやりと艶めく赤い果実。
その『毒』をこの幼き姫は当たり前のように食していたのだと。





✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄



誰ぞか喜んでくださるのか連続あっぷ☆
ここまで来ると久しぶりに来た方がどっから読めばいいのかちと混乱を招くだくなよーな気もする連続あっぷにてございまする。
_:(´ཀ`」 ∠):←すらんぷになると読みよりもやたら書く方に走りがちなひと。




んで、実は毒喰らいだったキョコさん。
(*⁰▿⁰*)



そして、今更ですけど……
髪はまだしも、目の色をカラコンなしで変えるってすんごい恐くね?
ファンタジーとかで薬草から絞った液を点眼とかってあったりするけど、色変えくらいな劇薬なら失明待った無しじゃね!?とか思ってはいけませぬ!!
パラレルファンタジーでっす☆美の魔術師のコスメマジックでなんでもありにてございまする。
だって、そうじゃないと原作でも敦賀さんの髪染め頻度とか睫毛とか眉毛まで染めるの?専属メイクでもないしドアップにしたらカラコンバレバレとかな問題とかどうしたらいいのか分かんなくなりますしね?
_(:3」z)_



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


web拍手 by FC2