18100番目の拍手を叩いていただいた、ここあ様からのリクエストに応じてしようとねりねりみしてみた結果にてございまする。



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あっ……しまった!と、その瞬間に彼女は思った。
ゲストとぶつかったアクシデントによりバランスを崩し、セットから弾かれるように滑り落ちてしまった空中で落下の衝撃に備え手を着こうと身体を捻ってしまった。
彼女、最上キョーコの平均値から飛び抜けた身体能力と反射神経、そして身のこなしからして普段通りであったならばその咄嗟の反応によりくるりと身を回し華麗に着地してみせたのだろう。
……が、キョーコにはモコモコもっふりまんまるな『着ぐるみ』という身体全体をカバーする重いハンデか科せられていたのである。
「っぅ!…………」
生放送本番、カメラが回っている真っ最中。キョーコは腕に走った鈍い痛みに上げかけた悲鳴をかみ殺すと、くるんっ!と立ち上がってステージ上のMCやゲストへ「おいおい、気を付けてくれたまえ!」的なジェスチャーをコミカルに取ってみせた。
そして、そのまま放送の終わりまで番組マスコットとして鶏を演じる仕事を全うしてみせたのである。
にっこりと笑う坊の顔の下に冷や汗と痛みに歪んだ顔を隠して。






「あー、見事なくらい綺麗にぽきっと折れてますね。」
収録が終わりセットから外に出た、その瞬間にキョーコはカメラと観客の目がある内はと奥歯を噛み締めて耐えていた酷い痛みにうずくまって動けなくなってしまった。
たちまちの内に、そんなキョーコを心配してブリッジロックやスタッフたちが集まってくる。
最早キョーコ一人で着脱できる代物でなくなった鶏の着ぐるみから助け出されたキョーコは、LMEの売れっ子に怪我をさせたとその厳つい顔を真っ青にするプロデューサーが手配した車によって病院へと運ばれたのだった。
そして、キョーコを診察した医師は言ったのだ。
「利き腕なので不便だとは思いますがしばらくの間は動かそうとしたりしないように、安静にしてくださいね。」
かくして……キョーコの右腕前腕部は真っ白なギブスで固定されてしまったのであった。
そんなこんなな仕事上のアクシデントとその事後処理を経てな、現状。
キョーコは追い詰められていた。心理的にも、身体的にも……酷く。





「……ん?」
病院までお迎えに来てくれたとびきりに有能なるマネージャー。
近々の動かせる仕事は調整しといたよ。今期のドラマの撮りは先週終わらせてるしオファーが決まってる映画の本格的な撮影は3ヶ月先からの予定だし、とりあえず今は安静にしてギブスが取れたらリハビリがんばろうねー!と、落ち込むキョーコを励ました彼は、目立ち過ぎるからと事務所で待てを厳命されていた男の前にペイっとにんまりとした笑顔でもってキョーコを差し出してくれちゃったのである。
一方、残され後ずさるキョーコの背後には逃げ道を塞ぐ硬い壁。
まさしく追い詰められた袋のネズミ的心情に陥ってしまっているキョーコの目の前、まさにその鼻先10センチメートルな迄の至近距離。キュラキュラと輝きを振りまいているのは、ドアップに耐えうる完璧なまでに秀麗な美貌の男の顔である。
春の陽射しかのように朗らかなまでに微笑んでいるが……キョーコには
『あん?今、何て言ったかな?もう一回言ってごらん?』
とお気に召す解答が出来なかった場合どうなるか……的にヤの付く強面の法的によろしくない自由業な方にでも凄まれているように思えてしょうがない。それでも……このまま流される訳にはいかないと、キョーコは震える唇からぽしょぽしょと小さな声を絞り出す。
「ぃゃ、あの……この通りわたくしめが事故管理責任を怠って……骨折などという負傷を負いましたので……ギブスが取れるまで………………敦賀さんのお家を出ようかと…」
きょとりきょとりと目を泳がせまくりながらもキョーコがそこまでを言葉にすると、グイッと神の寵児との距離が5センチメートルまで狭められた。
「どうして?」
にっこり。そんな効果音でも聞こえてきそうな笑顔である……のだが、その世の数多の乙女たちが熱く見つめられたいと望むであろう切れ長の黒の含有量の高い瞳からは微塵も真剣な色が薄まらないままである。
「ですから!この腕なのでっ!!」
どんどんと詰められる隙間、その間にズイッと肩からアームホルダーに吊られた腕を指し示すキョーコ。
「俺がいたら何がなんでも護ってみせたのに……」
真剣なトーンの声で蓮はそう言うのだが、キョーコにしてみれば『貴方がいらしてた場合、確実にスペシャルゲストとしての出演になりますし、敦賀蓮を下敷きにする坊なんて許されませんからっ!』である。
「かわいそうに。よりによって利き腕だし、日常生活もままならないね。」
蓮のその言葉に、ですから!とキョーコは我が意を得たりとコクコクと頷いてみせたのだが…………
にっこりと笑って蓮はキョーコへと甘ったるいまでの低い声できっぱりと告げたのである。




「うん。だからこそ、うちを出るなんておかしいじゃないか。病める時も健やかなる時もお互いに支え合うべきだろう?
俺はキョーコの婚約者なんだから。」





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いぇーい、なんだコレ?
こっからどすんだ、猫木???
_(:3」z)_←毎度毎度のノープランにございまする。



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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