17700番目の拍手を叩いていただいたミーアさまからのリクエストよりぽちぽちと……


先に謝っておきまする。
猫木、今やってるドラマどころかTVさえろくに見ない生活を送っております。ので……よくわかりませんでした!
方向性が全く違ってたらごめんなさいです。
_:(´ཀ`」 ∠):



✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄




いけない事だと解っていても……
いや、罪だと解っているからこそ



蜜の味は甘いのだろうか?







「おかえりなさい、あなた。」
夫の帰宅を出迎える妻。
そんな一般的な日常を切り取ったかのようなひとコマ……だが、帰宅した男には笑顔のかけらもなくギラギラとした瞳をただ妻へとぎょろぎょろと彷徨わせるばかり。
「…………家から出なかっただろうな。」
「ええ。あなたの言いつけ通り、一歩も。」
イライラとした様子を隠そうともしない夫に不審がる素振りもなく薄く微笑んでいる女。
何かを探すような男はやがて気付く。
ほんの僅か……だが、まるでワザとその小さな違和感に気付かせる為に女の肌に残されたような残り香に。
「お前っ!!まさか、家にっ……」
くしゃりと歪んだ男の顔に浮かぶのは、激しい怒りと……苦しげに深く悔やむような複雑な色。
そんな男の表情をしっかりと見据えて、女はくすりと嗤ってみせたのだ。
「家からは出てないわ。ただ、来てもらったわ。今更、何?先に私を裏切ったのは……あなたでしょう?」
甚振るように、恍惚とそう。







「カットー!!」
スタジオに響く声。組み上げられたセットの中では今撮った絵と違った演出を思い付いたらしき監督が演じていた俳優と女優へ興奮気味に声をかけている。
蓮はスタジオの片隅に立ち、その女優の演技を見つめていた。
「敦賀さん、『和臣』がはまり役だって思ってたんですけど……『秋吉』も演れそうですよね。」
蓮の隣で同じくセットの中の女優へと視線を貼り付けたままの役者はボソリとそう蓮へと呟いた。素のままでと、そう付け足された言葉がはっきりと聞こえそうな程にありありと毒を乗せた声で。
共演者、それも蓮が演じる『和臣』の妻役としてはいささかどうかと思うほどにトゲを含んだ冷たい千織の態度。
だがまぁそれは、ふたりが見つめる先、その女優であるキョーコを蓮が神にも逆らう覚悟でもってやっと落とし込んで恋人となったと報告した1年ほど前のその瞬間から、あからさまなまでキョーコを泣かせようものならば呪うとまでにくっきりとしたピリつくような不信と敵意を千織から向けられ続けてきたのだから、蓮には最早慣れたものだ。
それに……蓮自身にも千織から投げられたその言葉を否定できないような思いもあったのだから。




蓮とキョーコ、そして千織が出演している今話題沸騰中の連続ドラマ。
そのテーマたるや事務所の社長がニヤけそうな重くドロドロとした複雑な恋愛物であった……ただ、それが生涯を誓った伴侶裏切る罪の蜜をテーマとした不倫というショッキングなテイストを含んだものだったのだけれど。
大学のゼミが同じだったそんなありがちな出会いを経て平凡とも言える恋愛をして、築き上げたありふれた幸福な家庭。冷えたとか嫌いになったとかそんな劇的な変化もなく、ただ空気のようにそばに有るのが当たり前になっていた日常。
そこに唐突に訪れた、滴り誘う蜜の誘惑。
いけないと解っていながらも……『秋吉』が落ちた不倫という罪。
それが、キョーコが演じる『春香』を狂わせた。
そんなドラマで蓮が演じるのは幼き頃の母親との確執よって女性不信なところのある『和臣』という男。なまじ頭脳優秀で見た目が秀麗であったが為に群がるような女性たちと関係を持ちながらも女を信じる事が出来ないまま、千織が演じる同じく人間不振の妻と社会的にも都合のいいからとまるで契約結婚のような冷え切った家庭を持つ遊び人。
ふとしたきっかけで出会った絵に描いたような貞淑な妻であった『春香』を最初はいつもの遊びの延長線なのりで揶揄うように……だが、いつのまにか罠に嵌ったように本気で口説き倒すようになり……そして『秋吉』の不倫をきっかけに『春香』と不倫の仲となる男。
そう、今キョーコが演じている『春香』に残されているのは蓮が演じる男との自宅での密会の痕跡。
夫婦の極めてプライベートな空間の筈の家庭空間へ、夫が留守の間にひとの妻である筈の春香に招かれ不貞を重ねるまでになる間男の役。
まぁ、要はキョーコを相手に甘い言葉で口説いて妖しく誘って迫りたおす役どころ、それもドラマの中でのキョーコの絡みなラブシーンもありな『和臣』が、日頃からべったりと恋人のキョーコに纏わりつく蓮にはぴったりのはまり役だと……
そして、先に裏切ったくせに今更に妻へとドロドロとした悋気と執着をみせて拘束しようとする『秋吉』も素で演れそうだと、そう千織はぼそりと吐き捨てたのだ。
いくらなんでも今日はとげとげし過ぎるんじゃ……なんて蓮が訝しんでいると千織はボソボソと口の中で呟き続けたのだ。
「……女優の肌に痕を残すだなんて駄犬が…………私のフェアリーにっ」
今にも舌打ちでもしそうな程に忌々しげな声。きっと手元にペンとノートがあったならばキョーコが毒ノートと呼ぶおどろおどろしい文字が書き連ねられていたのだろう。



あぁ……昨日のが見つかったからか。と、蓮は千織の苛立ちの根源が自分がキョーコに付けた独占欲の所為なのだと知る。
ぎりぎり衣装で隠れてる所にしかつけないでいたつもりだったけれど……
昨日の夜、蓮の腕の中で揺さぶられ肌に濃く赤い執着心の痕をべったりと刻まれていたキョーコが眠りにつけたのは空が明るくなるほんの数時間前のこと。照明の強いライトとメイクで隠されているが、セットの中にいるキョーコをよくよく見てみればうっすらと血色の悪い顔色が寝不足の不調を纏わせている。
グサグサと刺さるような蓮を非難する千織の呟き。後ろめたい所が山盛りなだけに……反論も、キョーコは俺のだよ?などとは口に出したりはせず、沈黙を通す。





だが、蓮はキョーコへとどこか危うく仄暗く絡むような視線を張り付かせたまま考えてしまう。
妻が他の男に奪われないように家に閉じ込めて拘束しようとする夫の役か…………俺が演ったなら、素の俺だったなら、きっとあんなものじゃ済まないだろうな、と。
それでも夫の役だったなら……いや、いっその事キョーコの夫役も浮気相手役も両方ともを俺が演れていたなら…………




ここまで、役に引きづられて無様に情けない程にぐらついて不安定になることもなかっただろうか……と、そう。





✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄ฺ----✄



なんかもう前編なこの時点でズレてるような気がばりばりしてまっす!
こっからどうしよ?
_(:3」z)_←いつもどおりなノープラン。



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


web拍手 by FC2