嘘吐き猫木にてございます。
_:(´ཀ`」 ∠):
後編で終われませんでしたとさ。



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「最上さん」



蓮がそう呼んだ声に、ビクリと竦みあがるような細い肩。
振り向いて、お疲れ様ですと頭を下げたキョーコ。その顔にはやはり怯えの色が見て取れる。
さっきまで、長谷部と居た時には笑っていた癖に……蓮の機嫌が更に悪くなったのを敏感に感じ取っておどつくキョーコに、蓮の中でどろりと毒のある感情が沸き上がる。
どうせ、俺には笑ってくれもしないのなら……どこまでも追い詰めてしまいたい。
「長谷部くんと楽しそうに何を……話していたの?」
コツコツと、蓮の靴がゆっくりと足音をさせながらキョーコへと近付いてゆく。
「何って……。ひ、秘密です。」
ビクリと震えながら、けれど、カァッと頬を赤らめてキョーコはそう答えた。
キョーコのその反応を引き出したのが長谷部なのかと、蓮の悋気をより一層に煽るようだ。
「ふぅん?俺には、言えないような秘密?」
蓮の纏う空気が更に刺々しくなるのを感じてか、おい、蓮と社が釘をさすように小さく声を掛けるのを背後に黙殺したまま。
硬く問い詰めるような低い声とピリピリと感じる蓮の怒りに、知らず知らずにキョーコの足はジリっと後ずさるのだけど、そこは決して広いとは言えない廊下。キョーコの背中を塞ぐ冷たい壁が立ち塞ぐ。
「敦賀さん……」
何故にここまで蓮が怒っているのか解らず混乱したままの震えを含むキョーコの声が蓮の名前を呼んだ。まるで、助けを求めるように。
けれど、キョーコの前に立っている男は仄暗く薄く笑う。獲物を甚振るBJのようなその笑みに、ぞわりとキョーコの背中を恐怖が舐める。
「長谷部くんとの秘密……話す気になった?」
ありありと怯えの色が浮んだ蓮を惹きつける琥珀色の瞳を覗き込みながら、低い声が最後通告かのように告げる。
ふるふると左右に首を振るうキョーコ。
「そう。じゃぁ、話したくなるように……してあげようか?」
幼な子に優しく言い聞かせるかのような低い声。
怯えられたくなくて、護りたかった筈の蓮の想い人。なのに、今は酷く凶暴な感情が渦巻いて止まらない。
蓮は視界の端に、こちらへと歩いて来る長谷部の姿を認めながらキョーコのへと手を伸ばす。
一方、意識を逸らせば喉元に喰いつかれるかのように追い詰められていたキョーコは長谷部に気付けぬまま、伸ばされた蓮の手から逃れるように身を竦めぎゅっと目を閉じたキョーコが細く悲鳴のようにこぼす。
「長谷部さんは……長谷部さんは、私のはじめての…」
そこまでで、はっとしたように強く唇を噛んで言葉を閉ざしたキョーコ。
キョーコのはじめての何だと言うのか。はじめての……恋人だとでも?そんな事、許せるものか。
のそりと、深く闇の中に沈め閉じ込めた筈の凶悪な自分が頭を擡げるのを感じながら伸ばした蓮の手がキョーコの頬に触れる寸前に
「京子ちゃん!」
慌てたように長谷部が走りよって来る。
男が口にしたキョーコではない、芸名の響きの名前も
「……長谷部さん」
縋るようにそう男を呼ぶキョーコの声も、蓮の苛立ちを酷く煽る。
唐突に現れた、蓮のただひとりの愛しく焦がれるような存在であるキョーコを奪ってゆく憎き恋敵。
キョーコを渡すつもりはないと、キョーコへと伸ばした手を降ろさぬままに敵意に燃えた睨みつける瞳を向ける。
蓮の数歩ほど前までやって来た長谷部は、オタオタとしているキョーコへちらりと目をやり、安心させるように小さく笑って、そして、ふぅと決意を込めるかのように小さく息を吐いてから
「大丈夫、京子ちゃん。敦賀さんには俺から……話すから」
と、やわらかくキョーコへそう告げた。
そして、長谷部は鋭いままの蓮の強い視線を正面から逸らさずにまっすぐに対峙し受け止めると





「すいませんでしたっ!俺、不純な気持ちで…」





と、俳優の発声基礎に裏打ちされた腹から出たしっかりした声でそう言いながら、がばりと蓮に向かって深々と頭を下げたのだった。






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はっふーん。前中後編で纏め切れませんでしたとさー!
計画性とすっきり終わる文章力をくださいっ!!
。゜゜(´□`。)°゜。



へへーい!頭下げちゃった長谷部くん。
長谷部くんの不純な気持ちもキョコさんの下心も、ちゃんとございやすのですぞよ。
はてさてどうなるー?
次こそ、ラストまで行ければなぁ。



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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