キョーコは、 白い白い白いどこまでも白い世界にくるまっている。
兄妹としてホテルで過ごしたあの生活の中で見た兄の寝姿みたいにシーツの中にすっぽりと潜り込むみたいに………逃げ込んで必死にシーツの端を握りしめて押さえ込んでいた。
どなた様でございましょう?と、聞いてしまいたいくらいにふにゃりと笑み崩れてありえないほど甘い言葉とおねだりを口にしてくる、昨日までは尊敬する意地悪な先輩だった男から逃げて。
そんなキョーコの逃避など許す気などちっとも持ち合わせてない蓮は、実にウキウキとキョーコをシーツの繭ごと抱きしめて隙あらばそのシーツを剥がそうとするのだけれど。
そこで、キョーコは一矢報いたいようなそんな気持ちにじわじわと苛まれていた。



だるーい………と、そう思いながら目を覚ましたキョーコの眼前に飛び込んで来たのは、神様が丁寧に丁寧に造形したんだろうなと思わせるほどの整った男の顔だった。いつかの彼の枕になって欲しいと頼まれたあの時の様にじっと寝顔覗き込むなんてひどい!と、キョーコが恥じらうその前に「おはよう、キョーコ。寝顔もありえないくらいかわいいけど、起きてもやっぱりかわいいね。」なんてそんな戯言をぬかす彼の抱擁にさらわれて。
散弾の用に降り注ぐ「かわいい」「好き」「愛してる」とかのそんな言葉と啄むみたいなキスとなによりキョーコを見るその蜂蜜でも詰め込んだみたいに甘い眼差し………そんな、目に入れても痛くないどころか入るんなら是非にも入れてしまいたいといった溺愛と、「好きって言ってくれたよね?もう一回、言って?」「キョーコは俺の恋人だよね?」と言うしつこいほどの念押し。
そんな寝起きにもベビー過ぎるはしゃぎまわる大型犬のようになってしまったものに巻き込まれてキョーコは、ほんのちょっぴりのにやけてしまうような嬉しいと思う心と残り大半の困り果てるみたいな境地からシーツの中へとそれはそれはもうどこかのリミッターを振り切ったようにして逃げ込んだのだった。
そんなキョーコに、どこかニタニタとした気配さえ含んだみたいな勝手な男の恨み言が落とされた。「もっとはやく言ってくれればよかったのに………」なんて、そんな棚上げも甚しく。




そもそもこの先輩は勝手なのだ。
振り回すように思わせぶりで回りくどくてそんなふうには思えもしない言葉ばかりで………
昨夜だって、あんなどうしようにもなくなってしまうまでキョーコに言わせもしてくれないほどだったのに………と、そんなキョーコにさらに「どうして俺のこと好きなのに他の男とあんなふうに会ってたりしたの?」なんて聞かれたものだからキョーコの、追い詰められたネズミの牙がちらりと覗く。このわがまま身勝手な先輩の顔色を変えてやりたいとその一心で
「君が応援してほしいって言ったからだろ」
と、彼が恋話さえしてしまう彼のちょっと変わった鳥の友人のその声で告げた。
ギシリっと背後でかたまる気配の後に低い小さな「う、そだろ………」と言う声。
緩んだ拘束からシーツごと抜け出したキョーコはペタリとベッドの上に座ると、そろりとシーツから目だけを覗かせる。
真っ赤に真っ赤に見たこともないほどに赤く染まった蓮が、べしゃりとぺしゃんこに沈み込んでいるのを見下ろしたキョーコは、ニヤリと悪く笑いながら
「てんてこ舞いってどんな舞いだろうね?」
なんて追い討ちをかけてみせる。






やっぱりこの子に勝てる気がしないと、もう顔も上げることさえ出来ない蓮はそう思っていた。





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甘く終わらせようかと思ってたのに、ちょいと意地悪キョコさんみたいなものが出てきちゃった。笑


これにて、発熱猫木が無計画に書き始めたきょうせいれんあいも終わりかな?
も一個、『共生恋愛ラブゲーム。』ってのを考えてたけどだらだらと終わりそうもなかったのでお蔵入り。


辻褄合わない変な拗れたふたりのお話にお付き合いありがとうでした。
( ´ ▽ ` )ノ



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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