「このままだと、会社をクビになってしまう。」

業績の良い会社が、正社員をクビにすることは出来ないの

ですが、当時の私は労働基準法の事なんて何にも知りません

でした。

自宅には、練習用の開発環境は整えていましたので、
帰宅してからプログラムの記述の仕方を少しづつ覚えて

いきました。

そして、OS、データベース、開発ソフトのインストール、

ネットワーク環境設定が出来るようになってきた頃、私に

とってはとても大きな仕事を任されることになりました。

一般社会人の方であればご存知だと思いますが、ある帳票を

他の部署や会社にファックスする場合、パソコンから帳票類を

印刷して、印刷された帳票をファックス機を使って送信します

よね?

この一連の動作を手動ではなく、システムで自動化するという

開発案件を任されることに。

帰宅してから毎晩遅くまで練習してたので、大丈夫だろうと

思っていましたが、全く大丈夫ではありませんでした。

またK先輩を困らせることに。

K先輩:「ファックスの自動化のソースは記述されているから、

      これをユーザーの要望に沿ってカスタマイズして。」
私:「・・・。(何を言ってるのかさっぱり分からない。)」
  「あの、ファックスを自動化って、手で送るものなのに

   どうやって自動で送るんですか?」
K先輩:「だから、自動化のソースは記述されてるって

      言ってるでしょ?!」
     「あなたは、それ以外の部分をユーザーの要望に

      合わせてカスタマイズすればいいのよ!」
私:「あの、カスタマイズって何ですか?」
K先輩:「そこから説明するの??」
     「もういい!私がやる!」
私:「スミマセン。自分で調べてやってみます。」

言ったものの、何から調べて手を付けたらいいのか頭の中が

真っ白になりました。

「K先輩は宇宙人なのかもしれない。どこかの星から地球に

やってきたのかもしれない。」
「でも、何で日本語を話せるんだろう?」
なんてことを本気で思ったりしていました。

システム開発は、まずお客様(エンドユーザー)の業務内容を

理解した上で、それをシステム(業務アプリ)化していくわけで、

業務内容もシステム内容も分かっていない私に開発なんて

出来るわけがなかったのです。

でも、全て自分の無知で無能が原因なので仕方ありません。

システムを構築できるようになるまでには、いつくもの

ハードルを越えていかなければなりません。

・開発用のプログラム言語(C言語、VB言語など)の知識が

一定以上必要であること。
・データベース構築の知識が一定以上必要であること。
・データベース操作言語(SQL)の知識が一定以上必要で

あること。
・会社が提供しているシステムに搭載されている全ての機能を

把握していること。
・お客様の業務内容の全体を把握していることが前提で、かつ

お客様の要望が会社が提供しているシステムに実装できるか

どうかを判断するための能力が必要であること。

これは当時のクライアントサーバー型というネットワーク

システムで成り立っていたものなので、クラウドサーバーの

現代では通用しないのかもしれませんが。(笑)

「とにかく為せば成る何事も」と言い聞かせて、何とか気丈に

振る舞っていましたが、開発作業と導入済みのシステム保守も

やっていましたので、朝7時に出社して午前3時に帰社すると

いう壮絶な生活を送っていました。

厄介だったのが、ファックスを自動化するためのソフト(仮に

FAX送受信ソフトとします。)のインストールでした。
手順通りにやってもファックスサーバーとモデムの通信が

ハード的には問題ないのですが、FAX送受信ソフトとモデムの

通信が上手くいく場合と上手くいかない場合があって、後に

原因が判明するのですが、FAX送受信ソフト自体にバグ

(ソフト上の欠陥)があったのです。

素人同然の私がそんなバグがあることなんて知る由もなく、

何とか動いてくれる環境を構築し、実際に導入するまでに

なりました。

導入してから1カ月後、お客様から「ファックスが全く送られ

なくなっている。」とのクレームがあり、至急FAX送受信ソフトの

状態を確認した所、送信履歴が1万回を少し超えた所から
送信処理がエラーとなっていることが分かりました。

まず、自分が開発したプログラムに問題がないかどうかを

確認します。
「1万回送信したら送信処理を行わない記述になって

いないなぁ。」
「何でなの??」

原因不明ということで、すぐにお客様の所に行って、

FAX送受信ソフトの再インストールを行いました。
すると、送信も受信もできるようになったので、その日は

ずっと問題ないことを確認して帰りました。

また、1か月後同じ問題が発生します。
FAX送受信ソフトの再インストールで復旧。
これの繰り返しでした。

FAX送受信ソフトの開発元に問い合わせましたが、

とても不誠実な対応を繰り返してきました。
結局その会社は別の会社にFAX送受信ソフト一式を

引き渡して消えていきました。

この経験から、正規で販売されているソフトにも

欠陥があるんだ、何でも正しいと決めつけて行動する

のではなく、もしかしたら間違っている場合もあるん

じゃないかと疑って行動することも大切なんだということを

学ばせてもらいました。