2024年3月7日（木）～2024年3月20日（水）
東京都 本多劇場
作・演出：
出演
田中哲司 / 安達祐実 / でんでん / 村岡希美 / 水澤紳吾 / 樋口日奈 / 薬丸翔 / 井上向日葵 / 赤堀雅秋
あらすじ
冬、夜が更けつつある頃。
古いマンションを挟むようにY字になった二股の道があり、左には石段、右には細い路地が続いている。
電話ボックス、自動販売機、ごみ集積所、放置自転車。
何処にでもある片隅の光景に、一人、喪服の女（安達祐実）が現れた。
続いて石段の上からは中年男（田中哲司）。
互いをやり過ごした後、残った男は煙草に火をつけ、それをマンションの住人である中年女（村岡希美）が見咎め、糾弾する。
体調の悪そうな警官（赤堀雅秋）が現れ、中年女とのやりとりから、この町で連続放火事件が起きていることがわかる。
さらには奇矯な言動の老人（でんでん）と、彼を庇護する様子の小柄な女（井上向日葵）、喪服の女のつれの男（水澤紳吾）、マンションに住むキャバクラ勤めの若い女（樋口日奈）と彼女を追い回している様子の若くもない男（薬丸翔）という手近な関係以上には繋がるはずのない9人が、その夜、偶然Y字路の周辺で行き会った。
そこに行かねばならない、居なければならない理由はきっと誰にもなかったのに。
消防車のサイレンが聞こえてくる。
夜空が明るくなるほどの火の手が上がり、町を赤く照らし出す。
中年男は甲州街道を見出せるのか。
彷徨う9人は夜の涯てを越え、朝に辿り着けるだろうか。
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公式サイトより
舞台の見せ方には二種類あって、
一つは現場がまったく変わらないもの。
一つの部屋に登場人物が出たりはいったり
というパターン。
もう一つは、シーンごとに現場が変わっていくもの。
セットを組んだり、素舞台に小道具で表現したり、
というパターン。
で、今作は、
とあるマンシヨンの前の道が舞台。
この道を行き交う人たちの
一晩の物語。
いや、物語以前のお話で、
何も始まらないし、
何も終わらないし、
何も変わらない。
ただ、そこにいる人たちが
出会って、会話し、
自分の部屋に戻っていく。
出会ったことで
変わるのか、変わらないのか、
始まるのか、終わるのか。
それは舞台上では語られないので、
その先を
知りたければ、
自分の頭で考えるしかない。
淡々と淡々と
生活は続く。
赤堀さんが挑戦と言っていた通り、
これは、
物語から物語を排除した物語だ。
登場人物は
どこからかやってきて、
どこかへ去っていく。
彼らの背景は語られない。
ドラマ性もない。
なので、
感情移入のとっかかりがない。
安易に物語を消費させない。
という、
赤堀さんの決意が見える。
あとは、観客側が
どこまで許容できるか、
どこまで深く突き詰められるか、
にかかっている。
もちろん、
あっさり捨てるでも良し、
時々彼らを思い出しても良し。
赤堀作品は、
日常に刺さった棘のようだ。
すぐに抜いても、
ずっと抜けなくても、
いつまでもズキズキと
痛んでいる。