みょん×ソードさん ep.1? 『魔理沙 ラヴュー』①
みょん×ソードさんをご覧いただいて、ありがとうございます。が、いきなり悲しいお知らせです。
当作品は、上海アリス幻樂団の「東方project」をベースにして執筆された二次創作、「東方機人大戦」の番外編的位置づけのものですが……その過程において、妖精に化かされて道に迷ったり、地獄烏の放射線を浴びたり、永遠亭製の薬物を混入されたり、スキマに落っこちたり、筆者が酒に酔っていたりと様々な異常事態に遭遇したため、本編とも、一連の二次創作とも著しく内容が異なるものとなりました。したがって、全編にわたってボンクラ濃度濃い目、⑨数値高め、思いつきレベル強、サービス精神皆無でお届けいたします。ご了承ください。
尚、閲覧状況においては作中のネタが寒く感じられる場合がございますが、そのような時は直ちに観賞を中止し、酒か涙か男か女に逃避してください。最後に、閲覧中の弾幕勝負、異変誘発、賽銭強要、マシンの呼び出しは、他のお客様の迷惑になりますので、ご遠慮ください。
以上、白玉楼の庭師、魂魄妖夢からのお知らせでした。
途方もない夢が喧騒のままに転がってゆく。
欲望の嵐が小さな平穏を吹き飛ばす。
幻想卿はそんな場所。所詮、外界の忘れ物。
いつまで待てばこの恋心は報われるのか。汚れ無き願いはかなうのか。
光届かぬ窓を覗き込んだとき、欲望の車輪は動きだす。
みょん×ソードさん ep.1? 『魔理沙 ラヴュー』
「魔理沙…サイッコー!」
霧雨亭を双眼鏡で覗き込みながら、アリスは呟いた。双眼鏡に映るのは机に突っ伏したまま寝息を立てている魔理沙の姿。
「ラブリー!ワイルド!スウィーティー!」
双眼鏡を覗きこんだまま、恍惚とした表情で呟くアリス。その鼻からは一筋の鼻血が垂れていた。
「アリス思うんだけど…やっぱ魔理沙以外の人間はダメ、アリスとしてはナンセンス!」
アリスは双眼鏡を下ろし、鼻血を垂らしたまま、背後に控える複数の影に問いかける。
「そう思わない?マイドールズ!」
「「イエッサー!マム!アリス!」」
答えたのは彼女の操る上海人形を始めとした人形たち。しかし、その姿はいつものようなかわいらしい人形の姿でなく、例えるならば海で船乗りでもしていそうなほどの屈強な体格となっていた。……服装はそのままで。
「オウケィ!センキュ!」
サムズアップにした親指で鼻の下をピッと擦り、鼻血を拭いながら部下のコールにノリノリで応じるアリス。そして、ふとその目が霧雨亭に近づく影を捉えた。
「…ン?シャンハイ、何アレ?」
人形たちのリーダー格であるシャンハイが、屈強な体を『気をつけ』の体制にしたまま一歩前に出て、野太い声で答える。
「ハッ!先日我が家に現れた三月精とかいう光の妖精たちかと存じ上げます」
アリスの瞳には、霧雨亭の玄関の前で作戦会議らしきものを行う小さな三人の妖精が映っていた。アリスの表情が曇り、眉間にしわが寄る。
「ノゥ…せっかく魔理沙がプリティな寝顔で寝てるのに…いつものワイルドさとのギャップをアリスが楽しんでるのに…邪魔する?それって許せる?マイドールズ?」
問いかけるアリスに腕を振り上げて答えるシャンハイたち。
「「言語道断です!マム!」」
「じゃぁ…キャプチャー、ヨロシク」
「「イエッサー、マム!アリス!」」
返答とともにシャンハイが振り返る。
「A班とB班に分かれて奴らを挟撃する!ただし、極力音を立てずに奴らを確保しろ!三日間にわたる徹夜の研究明けで眠っているとはいえ、下らん騒ぎを起こしてマムのスィートハ二ーを目覚めさせるな!分かったか!?」
小声だが気合の入った野太い声の指令が人形たちに伝えられる。
「「イエッサー!」」
人形たちはその指令に敬礼で答えると、素早く無駄のない、一糸乱れぬ動きで森の中に散っていった。
さながらその様は外界の軍隊における特殊部隊の如く。
そして屈強な精鋭たちは二分とたたぬうちに三月精を音もなく捕えると、す巻きにしてアリスの前に引き出してきたのである。
「ちょっと!何すんのよー!」
暴れて文句を言うサニーミルク。
「これは予想外の展開ね」
す巻きにされているというのに呑気につぶやく、スターサファイア。
「いや、展開としてはいつも通りだけど…さすがに今回はマズイんじゃないのコレ…」
一人不安な表情のルナチャイルド。
す巻きにされた三月精は、アリスの前に一列に並べ、転がされていた。
アリスは何処からか持ち込んでいた豪華なソファーから立ちあがると、ゆったりとした動きで三月精に近づき、その転がっている前にしゃがみこむ。
「放せ、この、七色―!」
「ノン、ガールズ」
抗議するサニーミルクに、指を振って返すアリス。
「七色じゃぁない。キャプテン・アリス…」
「いや、名前は知ってるから…って、キャプテン?」
ルナチャイルドに構わずにアリスは続ける。
「アリス、今、魔理沙のお昼寝ウォッチングしてるから…」
聖母のように微笑みながら、言い聞かせるようにつぶやくアリス。
「ちょーっと、サイレント、プリーズ?」
しかし、表情と裏腹に言ってることもやってることも変質者かつ外道である。
「訳分かんなムガガ!」
騒ぐサニーミルクの口を押さえるシャンハイ。
「マム、いかがいたします?」
「ンー、邪魔されても困るし…ウォッチング終わるまでここでスティしててもらおうかな? オーケィ? ガールズ?」
「ムガガガムーガガー!(いいわけないでしょー!)」
「状況的に他に選択肢は無さそうね」
「まぁ、いいけど…終わるまでってどのくらい?」
押さえつけられたサニーミルクを無視して、残りの二人は半ば諦めたように話を進める。
アリスの顔に不敵な笑みが広がる。
「話が早いね、クレバーガールズ。シャンハイ、データプリーズ」
「はっ!」
答えるシャンハイの手にあるのは、「魔理沙観察ラヴ日記」と表紙に書かれた辞書ほどもある分厚い書類。ページをめくるシャンハイの手が、中ほどまでめくったところでぴたりと止まる。
「ありました。前回の三日間にわたる徹夜明け時のデータでは、睡眠時間はそのまま丸三日となっています」
「えー!?」「ある意味すごいわね」「勘弁してよ…」
揃って驚愕(一人感嘆)の表情を浮かべる三月精。
「そんなにって……ずっと見てる気なの?」
「オフコース!」
微笑み、歯を光らせながら答えるアリス。その瞳には恍惚としながらも活き活きとした光が宿っている。
アリスは振り向くと、ソファーに向かって歩き出した。
「アリス思うんだけど…」
突然切り出し、空を見上げる。
「魔理沙って…誰のものでもないって…」
歩きながら、続ける。
「ってことは…逆に誰のものでもいいんじゃないかって、思うの」
アリスの足が、ソファーの前でぴたりと止まる。空を見上げたまま目を閉じるアリス。一拍置いて、ゆっくりと目を開けながら、呟くように、問いかけるように、言う。
「ってことは何? …アリスが頑張ったら…独占? …オーライ?」
「「その通りです!マム!」」
直立不動のまま一斉に答えるシャンハイたち。
アリスは優雅にクルリと反回転しソファーに腰をおろす。そして、最高の笑顔で部下たちの返答にさらなる返答を持って答える。
「センキュー!」
「一体何なの…?」
「さぁ…でも何だが楽しそうじゃない?」
「冗談じゃないわ、三日もす巻きなんて!」
「ぐぅ…」
ノリノリのアリスを前に困惑するルナチャイルドと興味津々のスターサファイア。そして、その後ろで騒ぎ疲れて寝入っているサニーミルク。
三者三様の反応に構わず、続けるアリス。
「だから…今回はいわば、千載一遇のチャンス?…タイムトゥーカム……?」
アリスの目が、捕食者の彩りを帯びる。
「アリス的には一秒たりとも見逃せない…そう、アリス逃がさないから…悪いけど、そういうことだから…」
周囲の茂みから複数の人形が音もなく出てきた。そのうち一体が前に出て報告する。
「キャンプの設営、物資備蓄、周囲の魔術的防音及び迷彩、全て完了しました」
「ちょっと!? 本気で三日間居座る気よ!?」
「確かに、コレはさすがにやばいわね…」
「…むにゃむにゃ…今度こそ異変…」
「もう目の前で起きてるわよ! ある意味最強クラスのが!」
加速する三月精──実質ルナのみ──の混乱。無情にも推移し悪化する状況。
「グッジョブ! …アリスは部下に恵まれてる」
アリスは優しい笑顔で部下の労をねぎらうと、勢いよく立ちあがった。
「ヘイ!」
天を仰ぎ、両腕を広げて叫ぶ。そして、シャンハイたちも主に答える。
「アリスはキューティー!?」
「「「イエス! キューティー! マム!」」」
「アリスは乙女!?」
「「「イエス! 乙女! マム!」」」
「アリスは魔理沙の嫁!?」
「「「イエス! 嫁! マム!」」」
「アリマリ・イズ・ジャスティス!?」
「「「イエス! ジャスティス! マム!」」」
「ッセンキュー! ラストワンッ!」
まるで熱狂ライブのMCのような状況の中、アリスは広げた両手を上げるとヒップホップのように前に突き出し、最後の問いを投げかける。
「アーユーハッピー!?」
「「「ハッピー!」」」
主に答え、太い腕を高々と振り上げた人形たちの鬨の声が、怒涛の勢いでキャンプに響きわたる。
「ヨロシクゥ!」
満足し、腕を下ろしながらソファに座るアリス。
もはや三月精は完全においてけぼりである。興味津々だったスターサファイアでさえ呆気にとられ、状況を見送るばかり。
「さて、アリス、魔理沙ウォッチングを再開するとしようか…」
「ごゆっくりなさいませ、マム!」
「サンキュ、シャンハイ」
返しながら鼻歌交じりに双眼鏡を取り出し、覗き込むアリス。
「いつだって魔理沙はサイッコー。言ってみれば、自由?彼女を見ていると自分が抑えられなくなる…ン?」
アリスの瞳が再び曇る。
「いかがなさいました?マム?」
「…何これ?」
本来なら魔理沙の寝顔が映るはずの双眼鏡のレンズ。しかし、そこに映っていたのは水面のように歪み続ける光のカーテンだった。
「不明ですが、魔術式の痕跡が見られます。少なくともそこに転がっている妖精の仕業ではないようです」
部下の人形からの報告書を片手に主に告げるシャンハイ。それを聞いたアリスは妙に納得した面持ちで呟いた。
「そう、そういうこと」
アリスはすべてを理解した。自分の他にも彼女を狙うものがいることを。恋敵が、あの魔女が、すぐ傍で彼女を妨害しようとしていることを。アリスの瞳が微かに闘志の彩を帯びる。
「いったい何が…?策敵!警戒を怠るな!」
シャンハイは主の様子を怪訝に思いながらも、部下に指示を出す。それからまもなく、アリスはソファーに座ったまま空を仰ぎ、何かに思いをはせるように呟いた。
「アリスいつもそう……何か事起こすと敵作る」
「「おおっ……!?」」
アリスの言葉に動揺する人形たち。ざわめきは瞬く間に広がる。
「春雪異変や、百鬼夜行のときもそうだった…撃たれ、堕とされ、スルーされた」
過去を反芻するように呟くアリス。人形たちは緊張した面持ちで主を見つめ、三月精は諦観の表情で経過を見守っていた。
「…でもさぁ!」
勢いよく立ちあがるアリス。
「ナメられた事だけは(多分)ない! 何故なら…必ず撃ち返したから! それがアリス! …アリスのやり方! オーケィ? マイドールズ!」
「「オーケィ!」」
「シャンハイ、いつもの」
アリスは上海に一言だけかけると、自信たっぷりの表情でソファに腰掛けた。
「はっ!了解です、マム!…整備人形はLMS起動準備、工兵人形はGADS(グレート・アリス・ディティクティブ・センサー)を全方位展開!」
「「了解!」」
シャンハイの指揮に従い、人形たちが一斉に行動を開始した。地下からは地鳴りのような重い駆動音が響き、アンテナを頭に取り付けた人形が首を360度回転させながら周囲を捜し歩く。
「な…何なのよ!?」
涙目のルナチャイルドはおびえた表情で呟いた。彼女は普段から三月精の中で一番大人びた態度をとる常識人であり、そのぶんトラブルの度に苦労している。そして、ご多分にもれず今回も、眠っているサニーミルクと諦めて楽しもうとしているスターサファイアの二人と違って、彼女だけが恐怖を感じていた。この空間に訪れるであろう修羅の刻を。
恐怖の予感と混乱に襲われる彼女の耳に、さらなる混乱を招く声が届いたのはその直後だった。