ウルタールの路地裏から。 -90ページ目

みょん×ソードさん ep.1? 『魔理沙 ラヴュー』②

(いかんともしがたい①はこちら)






「やれやれ…考えは同じ、邪魔はお互い様」
 高く、小声で早口な少女の声。
「趣味というのも……楽ではないようね?」
 いつの間にか霧雨亭を覆っていた光のカーテンの中から姿を現したのは、一人の少女。線の細い体にゆったりとしたピンクの服をまとい、紫色の長髪をそよ風になびかせながら、風に乗ってゆっくりとアリスの前に降り立つ。
 そう、彼女こそ紅魔館に住む魔女にして、魔理沙を狙うアリスの恋敵、パチュリー・ノーレッジであった。
「精密な魔術を得意とするだけあって、流石にカンは鋭い」
 にやりと笑うパチュリー。
「フ…」
 同じく不敵な笑みで返すアリス。
「決着は」
 パチュリーの右手が天を指すとともに、左手に携えた魔導書が光を放つ。
「マシン…で」
 続いていた地鳴りのような駆動音がぴたりと止み、アリスが座っていたソファーごと地面に空いた大穴に飲み込まれる。
 巻き起こる突風、隆起する地面。
 天から、地から、鋼の巨体がその姿を現す。
 天から降りたつのは、妙にカラフルな配色とヒーロー然とした造形の装甲に身を包む大型マシン。太い腕と足、重厚なボディ、背中に取り付けられている鳥を模した飛行ユニットは、見るものに在る言葉を連想させた。そう、「勇者」という言葉を…!
「レッツゴー! パチュマリライフ!」
 叫び、光の粒子になってマシンに吸い込まれていくパチュリー。五人乗りのコックピットの中で、その姿が再構成されていく。パチュリーは確かめるように操縦幹を握りしめると、同じくコクピットの中で操縦幹を握っている小悪魔と二人の妖精メイドたちに目配せをし、問いかける。
「いいわね、 こあ、メイドたち」
「「はいっ!パチュリー様っ!」」
 帰ってくる威勢のよい返事。
 さらにパチュリーはコクピット中央の座席に目をやる。そこは五人乗りコクピットの唯一の空席。

 だが、彼女には見えていた。

 シートに座り、優しく微笑みかけてくる魔理沙の姿が。
『行こうぜ…パチュリー』
「ええ…!」
 パチュリーの心に静かに燃える愛の炎が、魔術エンジンに火を入れる。
 膨大なエネルギーが発生し、マシンの瞳に炎が宿った。巨体にパワーがみなぎり、四肢が駆動を始める。
「闇の中こそ知識が光る!」
 マシンが勢いよく腕を突き出すポーズをとる。
「微かな灯火慕情にくべて!」
 続けて、勢いよく左右に広げられる両剛腕。
「燃やせ、女の大・恋・愛!」
 腕を開いたポーズのまま、金色に変色していくマシン。その姿は、まさに金色の破壊神。
「知識とパンチ、慕情とキックは、『むきゅーん』だ!!」
 まるで歌舞伎のように大見栄を切る金色のマシン。
「魔理沙のために帰ってきたぞ、受けよ無敵のこの魔力!」
 拳を胸の前で突き合わせ、続けて勢いよく前に繰り出し、最後は天にかざしてその名を叫ぶ!!
「図書館! 恋愛! パチュマリソウル!」
 背後で巨大な火柱が、まるで金色の雄姿を讃えるがごとくに立ち昇った。炎を照り返し、輝く装甲。「勇者」の姿が、そこにはあった。
 その姿を、艦橋に収納されたソファーに座りながら、モニター越しに眺めるアリス。その口の端が歓喜に歪む。
「いいねぇ…騙されても、盗まれても、愛したやつだけが生き残り、魔理沙を手に入れる。それ、アリスのポリシー。こいつもチョット似てるかも。だけど…」
『『ハイ!魔理沙に、マム以外の嫁はいりません!』
 満足げに頷くアリス、それを合図にしたかのように、シャンハイが艦橋の中央でその名を叫ぶ。
「愛の地上戦艦、ラビュー魔理沙サイッコー号、浮上! 奴を叩きのめせ!」
「了解、掘削ドリル『リトルレギオン』駆動開始、人形魚雷『アーティフルサクリファイス』発射管、開きます!」
 シャンハイの号令に応え、部下の人形がコンソールを操作していく。それを眺めながら、ゆっくりと立ち上がるアリス。
「オウケィ…ラストナンバーにしようか、マイドールズ?」
「「イエッサー! マム! アリス!」」
「お待ちください、録画班から連絡、マムのスィートハ二―が姿を消したそうです!」
「ホワィ!?」
 まさに青天の霹靂。突然の報告に戸惑いを隠せないアリス。
 モニターが霧雨亭を映す。パチュリーがマシンに搭乗しているせいか、すでに光のカーテンは消えていた。しかし、窓の向こうに魔理沙の姿はない。
「これは…」
『お前ら』
 アリスの言葉を遮るかのように響く声。
『人様の久しぶりの睡眠時間を…』
 霧雨亭の背後の森をかきわけて、それは現れた。
『覚悟できてんだろうな?』
 白黒のボディに金色のたてがみを生やした、鋼鉄の獅子。
 鋼のボディ越しに伝わるほどの明確な殺意が、この場にいる全員に向けられていた。
「ふっふっふ…」
「マム?」
 突然笑いだすアリス。
 鋼鉄の獅子の背中に取り付けられていた箒のようなものが跳ね上がり、ゆっくりとその先端をアリスとパチュリーのマシンに向ける。それは、魔理沙の箒にミニ八卦炉を合わせたようなデザインの、巨大な箒型の砲身。
「参ったねぇ」
「前方の機体から高エネルギー反応!マム!」
『いっけぇぇぇぇぇ!キリサメライガァァァァァァ!!』
 咆哮する魔理沙の声に応じ、突撃を開始する白黒の鋼鉄獅子キリサメライガー。その砲身『キリサメ八卦ブルーム』にエネルギーが蓄積されていく。
「くっ、もう一度眠ってもらうわよ、魔理沙!ロイヤル・インフェ…」
「ちょっと、勘弁してよ!二人とも逃げるわよ!」
「そ、そうね!」
「ZZzz…」
「こいつは置いていこうかしら?」
「やめなさい」
『輝け、もっと、輝けぇぇ!』
「エネルギー上昇、魔力数値がセンサーを振り切っています!マム!退避を!」
「どうも」
 微笑みを浮かべながら目を閉じるアリス。
『安眠のォ、マスタァァァァァァァスパァァァァク!!』
 ブルームから迸った破邪の閃光が、すべてを包み込んだ。
 アリスも、シャンハイたちも、パチュリーも、当然、とばっちりを食った三月精たちも。
 光の通った後、全てが吹き飛びなぎ倒された大地で勝利の咆哮をあげるキリサメライガー。その中で魔理沙は大きく伸びをした。
「まったく、せっかく寝入ったのに目が覚めちまったぜ。でも、あんまり寝過ぎるのも良くないしな…っし!」
 軽く顔を振り、気合を入れる。
「研究でご無沙汰だったし、霊夢のところに茶をたかりにいくか。最近面白いことが起きてるみたいだしな」
 ライガーは答えるように一吠えすると、神社の方角に頭を向け、走りだした。
「よし、目覚まし代わりに景気よくいくぜ!」




「フ…流石は魔理沙。いつもアリスの想像の上をいく」
 神社の方角へ風のように駆けていくライガーを見送りながら、アリスは呟いた。
「ところでマム、録画したデータの件ですが…」
 部下とともにソファーごとアリスを運びながら報告するシャンハイを、軽く手を振って制するアリス。
「あぁ、もういいよ、アレは」
「は?」
「ノン、重要なのはデータじゃない。アリスは魔理沙の寝顔を覚えていて、魔理沙もアリスが見ていたってことを覚えていればいいって事。これこそが、二人の間に残るラヴの証ってことさ」
「な、なるほど…」
 アリスは納得する(したのか?)シャンハイを見て満足げに頷くと、ピンと人差し指を立てて部下に問いかける。それに、全力で答えるシャンハイたち。
「ヘイッ! マイドールズ! アリスは乙女チック!?」
「イエス! 乙女チック!」
「センキュ!」
 湿気を帯びた風が木々や化けキノコを揺らす午後の魔法の森に、黒コゲの人形使いと人形たちの声がいつまでも響いていた。
                                    



終わり(色々と)