日本の回転ずしチェーンが、中国で出店攻勢をかけている。「スシロー」は8月に北京市内で初めての店舗を開いたほか、「はま寿司」の店舗数は1年間でほぼ倍増して70店弱に拡大した。東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出が行われた2023年8月以降、中国国内では日本食の飲食店などへの逆風が強まったが、影響は緩和しつつある。(中国総局 山下福太郎)
北京市内に初めて開店したスシローの店舗。初日の21日には大勢の中国人らが詰めかけ一時10時間待ちとなった=大原一郎撮影© 読売新聞
スシローが21日に北京市中心部の商業施設に開いた店舗には一時、10時間待ちの行列ができた。日本では税込み120~150円の「いか」のすしは10元(約200円)などと日本国内より少し割高な設定だが、北京市内の無職男性(60)は「日本式の調理やサービスを味わいたい」と話していた。
スシローを展開するフード&ライフカンパニーズによると、中国本土の店舗は現在45店ある。処理水や景気低迷の影響で出店ペースは23年11月時点の計画を下回る見通しだが、地域を絞って出店を続ける方針だ。
14年に中国市場に参入したゼンショーホールディングスのはま寿司は出店を加速させ、店舗数は20年末に12店、23年9月に34店、今年8月末に67店と増えている。また、くら寿司も23年6月、中国1号店を上海に出店。現在は3店舗を構え、今後10年間で中国本土に100店を出店する方針を示している。
処理水の海洋放出を受けて中国政府は23年8月、日本産水産品の輸入や中国国内での提供を禁止し、官製メディアを中心に日本産食材への不安をあおるなどした。日本食を売りにする飲食店の客足や売り上げは減少した。
ただ、回転ずしチェーンの関係者は「回転ずしは値段が手頃で消費者の人気も高く、いち早く回復しつつある」と指摘する。中国の飲食業界は、消費の落ち込みで高級店を中心に閉店や倒産が相次ぐ。商業施設では空きテナントが増えており、一等地の出店コストが全般的に低下していることも回転ずしチェーンの追い風となっている。