安倍総理が暗殺されて2年間、ネット民として投票率の問題に正面から向き合ってこなかったという点を反省している。
思えば、失職の可能性こそ自浄作用の始まりである。労働者においては減給・解雇の危険、企業においては減益・倒産の危険があるからこそ、立ち直りのきっかけとなるのである。
したがって、まずは政治家に落選の恐怖を植え付けることから始めるべきであったのだろう。そして、官僚にはコントロールできる政治家が落選するというプレッシャーを与えるべきである。
安倍総理の暗殺=日本国民を敵に回す!!
この図式を敵に示すことができなかったこと、慙愧の念に堪えない。
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私はネコである。名前はもうない。
【188】要警戒!世界を中国化する「一帯一路」の危ない誘い
福島 香織
2019/03/14 06:00
(福島 香織:ジャーナリスト)
中国の一帯一路戦略は、昨年(2018年)頓挫しかけていた。エチオピア~ジブチ鉄道は棚上げとなり、マレーシア~シンガポール間高速鉄道プロジェクトは中止、パキスタンの政権交代に伴う一帯一路事業の見直しなどが続いた。また欧米諸国から、返済見込みのない事業に多額の融資をして相手国を借金漬けにして支配するやり方を「債務の罠」「中国式植民地主義」などと非難されてイメージも地に落ちていた。だが今年に入って、ひょっとすると一帯一路は息を吹き返すのか、と思わせる動きが出てきている。
1つはすでに日本でもニュースになっているイタリアの一帯一路への正式参加表明である。3月下旬に習近平がイタリアを訪問した際に、イタリアのジュゼッペ・コンテ首相と一帯一路参加に関する覚書を交わすことになっている。G7としては初の正式な「一帯一路」参加に、中国は急に自信を見せ始めた。昨年秋の安倍晋三首相訪中時に「第三国市場での日中協力」という名目で日本が一帯一路への支持姿勢を見せたことも追い風になっている。
加えて、なにより世界銀行が一帯一路のプロジェクト効果として、参加国の貿易を3.6%増やし、世界貿易全体も2.4%増加させたとポジティブに評価していることも大きい。コロンビア大学政治国際関係研究所のある研究者は、一帯一路について「中国は世界秩序の再構築プロセスの重要な要素」とまで語っているようで、中国の参考消息などが喜々としてこれを転載して報じている。
中国との接し方を巡って足並みが乱れるEU
イタリアが中国の思惑に気づいているかは別として、イタリアの国内事情はスキがあった。イタリアの左右ポピュリスト連立政権の内部で、鉄道プロジェクトをめぐる非常に厳しい対立があり、また財政赤字はEU規則の上限を上回りそうになっている。イタリアにしてみれば、大盤振る舞いを約束してくれる中国にすがりたいところだろう。
だが、中国の一帯一路戦略については、米国やEU諸国の間には依然、根強い不信感が強い。米国家安全保障委員会(NSC)のマーキス報道官は「フィナンシャル・タイムズ」に対し、「イタリア政府の(一帯一路への)支持がイタリア国民に持続的な恩恵をもたらすとは思えない。長期的にはイタリアの国際的信用を傷つける結果になりうる」(カッコ内は筆者)と脅しにも似たコメントを出している。
EU本部のあるベルギー・ブリュッセルも、イタリアが、中国に取り込まれたギリシャの二の舞になるのでは、と警戒している。そのあたりを最近、ドイツ華字メディア「ドイチェ・ベレ」が詳細に報じているので参考にしながら解説する。
中国は一帯一路の足掛かりとして、2012年からスタートしている中国と中・東欧首脳によるサミット「16+1」をフォーマットとして、EUを分裂させるための「トロイの木馬」を仕込んだ、と批判されている。たとえばギリシャのピレウス港の67%にのぼる株式の買収。ここは海のシルクロードの起点の1つである。続いてハンガリー・セルビア高速鉄道の入札。バルカン半島という地政学的要衝地が大量輸送インフラでつながれることになった。中国国家電網はギリシャ電網の株の24%を押さえており、ポルトガルでも電信、エネルギー、保険の4分の1を中国資本が押さえた。中・東欧から南欧に、すでに中国の経済力を通して政治力が浸透し始めている。チャイナマネーになびいたギリシャやハンガリーは、EUが中国の南シナ海問題や人権問題について非難の声明を出そうとすることに反対して、中国を名指しした非難声明が見送られたこともあった。
べったりとした親中派であったドイツは、中国にハイテク産業ロボットメーカー「クーカ」を2016年に買収されて少し目が覚め、「中国がEU事務に干渉している」と何度も非難するようになった。だが、華為科技(ファ―ウェイ)製品の全面締め出しには躊躇し、米国から「ファ―ウェイ製品を排除しなければ重要情報が共有できない」と圧力を受けているところだ。EU本部は域外からの投資審査を強化する仕組みを2020年秋から導入するが、これは中国の戦略的重要領域への投資に対するコントロールを強化するためでもある。だが、EU内部は再び中国の戦略に振り回され、その結束は乱れているのだ。ちなみにハンガリー・セルビア高速鉄道はその入札プロセスに疑義があるとして、着工が事実上の棚上げになっている。
こうした状況で、イタリアが一帯一路に参与するインパクトは小さくない。瀕死の一帯一路が復活するだけでなく、EUの亀裂がますます深まり、まさしく中国が狙う、世界秩序の再編の時代到来が早まる、ということになるやもしれない。
米ペンシルバニア州のハリスバーグ大学講師のエフティミアダスがドイチェ・ベレに対してこうコメントしている。「もし中国とイタリアの協議内容に、地政学的に重要な地域のインフラ建設や5Gネットワークのプロジェクトが含まれていたら、イタリアおよびEUの安全に深刻な悪影響をもたらす。いずれにしろ、イタリアの一帯一路参与がEUの政治的分裂と弱体化を招き、北京のEU“分割統治”戦略をさらに強化させることになる」
5G覇権を米中が争っている最中、EU諸国が米国と足並みをそろえて5Gを締め出すかどうかについて、もともと異論が出ている。欧州会議の見解としては、「中国企業が開発する5G対応端末には、製造業者および当局が非公開データや個人情報、さらに通信にEUの許可を経ずにアクセスできるバックドアが埋め込まれている可能性があるとされる最近の疑惑」について深刻な懸念を示しているが、イタリアの態度次第で、このEUのファーウェイ包囲網が決壊する可能性も高まるわけだ。
中国はネガティブイメージの払拭に必死
EUの揺らぎに勇気を得たのか、中国は目下開催中の全人代で一帯一路のネガティブイメージ払しょくの宣伝に懸命だ。
全人代、政治協商会議の「両会」(国会に相当)は外国メディアにも取材機会が与えられ、中国政治を国際社会に喧伝する最大のステージだ。王毅外相は記者会見で、「一帯一路が“債務の罠”と呼ばれていることについてどう思うか」と尋ねる質問に対して、「絶対に債務の罠(陥穽)などではなく、人々に恵みをもたらす饅頭(餡餅)だ(陥穽と餡餅は中国語発音が似ている)」と反駁。「すでに123カ国と29の国際期間が一帯一路の協力文書に調印し、明確に支持と信任票を投じている」「ケニアのモンバサ―ナイロビ鉄道は5万人もの雇用を生み出し、GDP伸び率1.5ポイント増に貢献した世紀の大プロジェクトだった」などとその成果を強調した。そして、「建設的な意見はいつでも出してほしい、本当に、共にビジネスを行い、共に造り、共に分かち合いたいのだ。一帯一路は、古きシルクロードを新時代によみがえらせることができる。違う民族、違う国家が手を取り合って人類運命共同体に力強い動力を注入しよう」と、最近の王毅にしてはずいぶん殊勝な態度で呼びかけた。
さらにカザフスタン記者から、一帯一路のプロジェクトの目的、やり方の不透明さについて質問されると王毅はこう訴えた。
「一帯一路は一切、お天道様の下で行われている。一国だけが独断でするのではなく、関係国が平等に参加し、ブラックボックスの中で操作することもなく、公開し、透明度を堅持している。・・・地元経済社会の発展のために、“雪中炭を送る”の影響力を発揮してきた。・・・一帯一路はグローバルな公共産品だから国際ルールを順守している。国際協力プラットフォームだから市場ルールに従って行われる。・・・我々は真心を込めて一帯一路への建言献策を歓迎し、一緒に一帯一路をうまく建設していきたい。・・・中国が恩恵を得るだけでなく、世界の幸福をつくりたいのだ」。なかなか言うじゃないか。
このほか、中国メディアはこの機会に、一帯一路は防災減災に役立つ、一帯一路はエコなどと喧伝。先進国はエコや防災といったフレーズに弱い。
また国家発展改革委員会副主任の寧吉喆はやはり全人代記者会見で、一帯一路についてこう語った。
「中国とフランスは、アジア・アフリカなどの一部国家で第三国市場での協力を行っている。シンガポールとも東南アジア国家で第三国市場協力を行い、日本ともタイで協力を開始した。協力内容は充実し続けて、一帯一路の協力メカニズム、モデル、プラットフォーム構築を推進し、イノベーションを続けている。一帯一路に対する人々のプロジェクト支持のパワーを一層大きくして、一帯一路建設を和平の道、繁栄の道、開放の道、エコの道、イノベーションの道、清廉潔白の道、文明の道としていく」
日本やフランスなど先進国とも実は協力しているんだ、とことさら強調して、一帯一路のネガティブイメージ払しょくに懸命なのだ。特に日本の国際イメージといえば、まずエコで清潔。中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)には入っていないが、アジア開発銀行を主導する日本の参画はこの上ない信用の担保になろう。
中国の本当の狙いと日本の立ち位置
だが、一帯一路の中国の本当の狙いというのは、かねてから主張されるように、中華圏を世界に打ち建てることである。習近平は何度も、世界がこれまで100年なかった未曾有の変局に直面しているということを強調し、「グローバルな統治システムが変革調整期の重要な時期を迎えており、中国は積極的に国際ルールの制定に参加し、グローバル統治の変革プロセスに参与し、推進し、リーダーシップをとるものとなるのだ」(「求是」2月16日号)と語っている。つまり、“米国スタンダード”であった世界の秩序がこれから再編成されるという局面で、中国こそが国際ルールメーカーになり、“中華秩序”で支配する世界を拡大するという野望を描いている。一帯一路はまさにその雛型であり、5Gもその野望に沿っての戦略なのだ。米国はその野望を阻むべく、同盟国の日本ともに「開かれたインド太平洋戦略」で一帯一路の拡大を包囲し、ファーウェイ締め出しによって5Gの国際基準を米国が手にしようとしている。
これは「閉じられた監理社会」と「開かれた自由社会」、「管理市場経済」と「自由市場経済」、「国家資本主義的独裁」と「自由資本主義の民主」といったグローバルスターダードを争う価値観・文明の衝突、いやすでに“戦争”といえる。まさしく“冷戦”である。
さて、一帯一路が本当に息を吹き返すのか、は4月に北京で開かれる第2回「一帯一路国際協力サミットフォーラム」に先進国首脳が何人参加するかが1つの判断材料だろう。それまで結論はあずけておく。
気になるのが、日本の立ち位置である。日本は一応、開かれたインド太平洋戦略の発案者であるし、米国同盟国として対中包囲網の一角をなしているのだが、昨年秋の首相訪中で、「第三国市場での日中協力」という形で一帯一路への協力を表明してみたり、ちょっと何を考えているかよく分からない。イタリアの一帯一路参与の時と違って、米国から嫌みの1つも言われていないので、米国も了解済みの深謀遠慮があるのかもしれない。
まさかと思うが、米中対立を緩和させる仲介役になろうとか考えているのか。あるいは、米中どちらがグローバルスタンダードを支配するか分からないので、両方に掛金をベットしておこう、という魂胆なのか。
もしそうなら、もう一度基本から考え直してほしい。日本にとって中華秩序と米国式グローバルスタンダード、どちらがなじみやすいか。「閉じられた監理社会」と「開かれた自由社会」、どちらを理想としているか。100年なかった未曾有の変局に直面しつつあるとき、小金儲けや目先の平和・安寧を優先して、理想を見失うようでは日本の未来は危うい。