安倍総理が暗殺されて1年間、ネット民として投票率の問題に正面から向き合ってこなかったという点を反省している。

思えば、失職の可能性こそ自浄作用の始まりである。労働者においては減給・解雇の危険、企業においては減益・倒産の危険があるからこそ、立ち直りのきっかけとなるのである。

したがって、まずは政治家に落選の恐怖を植え付けることから始めるべきであったのだろう。そして、官僚にはコントロールできる政治家が落選するというプレッシャーを与えるべきである。

 

安倍総理の暗殺=日本国民を敵に回す!!

 

この図式を敵に示すことができなかったこと、慙愧の念に堪えない。

 

 

私はネコである。名前はもうない。

【182】なにかがおかしい 真っ暗な闇に沈んでいく上海

姫田 小夏

2018/11/27 06:00

 

(姫田 小夏:ジャーナリスト)

「あれ、なんかおかしい・・・」

 上海の街の異変に気づいたのは、地下鉄10号線から地上に出た直後だった。10号線は市の中心部を東西に横断する主要な地下鉄路線で、通勤に利用する人も多い。

 午後7時、筆者は「上海体育場駅」で下車し、東に向かって歩いた。あたりは真っ暗で、すれ違う相手の顔ですら目を凝らさなければ見えないほどだった。

こんなに暗い街ではなかった

 中国に住宅の流通市場が形成されて20余年が経った。この間、上海では右肩上がりで住宅価格が上昇した。近年では2015年後半に“狂乱の不動産相場”が到来し、ごく普通の住宅に“億ション級”の価格がつけられるようになった。その勢いは2016年になっても止まらなかった。「天井だ」と言われていた上海の住宅価格は、日本円で2億円や3億円という大台を突き抜けた。

 上昇の一途をたどったのは住宅価格にとどまらない。日本とは比較にならない活発な消費活動に、日本からの訪問者は「景気はいいじゃないか」と口をそろえる。

 確かに日本と比べれば上海はまだまだ活気がある。だが久しぶりに上海を訪れた筆者にとって、異様と感じられる変化があった。

「こんなに暗い街だったかな?」

 上海体育場駅で下車して歩きながら、筆者は首をかしげずにいられなかった。

 その場では気のせいかもしれないと思ったのだが、そのあと午後8時過ぎに、高架上を走る4号線に乗って窓から外を眺めると、景色はやはり暗かった。4号線は市内の幹線道路である延安西路を南北に走る路線で、周囲には高層住宅も多い。

「やっぱりおかしい」と確信を持ったのは、市内の高速道路をタクシーで走ったときだ。運転手に「上海の人たちはみんな大体何時ごろに寝るんですか」と聞いてみると、「人にもよるけど、11時ぐらいでしょう」との答えだった。時刻はまだ夜10時を過ぎたばかりである。だが、タクシーからかつてあったような街の灯りはほとんど見えなかった。

 7年ぶりに上海を訪れたという東京からの出張者も、筆者と同じことを指摘していた。

「路線バスの911線に乗って目抜き通りを見わたしたら、街が真っ暗なんです。2011年に訪れたときの上海は、もっと活気に満ちていました。宴会が毎晩のようにあって、ヘッドライトをつけたタクシーの車列や飲食店のネオンが東京以上にまぶしいくらいでした」

 この出張者は、7年前に勤務していた日系企業が多く入居するオフィスビルを訪れた。すると、「平日の午後6時半なのに、ロビーにまったく人影がありませんでした。これには驚きました」という。元々、中国人は基本的に残業をしない。つまり、終業後に人がほとんどいなくなったというのは、“日系企業”が撤退したということの表れなのかもしれない。

灯りがともらない高層マンション

 上海の夜が真っ暗になっている。

 日が暮れるとあたりが闇に沈むのは、東京の郊外も同じだ。夜に北の荒川や南の多摩川を超えると、街の灯りが一気に減少する。それに近い雰囲気を、筆者は上海で感じた。

 その理由は「住宅」にあった。

 黄浦区で「銀杏家園」というマンションの3LDKの中古物件が売られている。下の写真は、2016年2月末に筆者が撮影した広告である。当時上海市民は、500万元、600万元とどんどん吊り上がる住宅価格に目を白黒させていた。その事例として写真を撮ったのだ。銀杏家園の部屋は515万元と660万元で売られていた。

 その後、約1年半でこの住宅の値段は倍近くに値上がりした。

 2001年に第1期が竣工した銀杏家園は、築年数による経年劣化は否めず、また南北に走る高架道路に近接していることから、必ずしも好立地とはいえない。それでも現在の価格は1150万元(約1億8700万円、1元=約16.3円)もする。ネットで検索すると、同じ住宅を1300万元で売り出している不動産会社もあった。日本円にすれば「2億円超」だ。

 今や上海市内では2000万元越えの高額中古物件も珍しくなくなった。だが、問題は「買い手がついてこられるのか?」ということだ。

 上海市内に在住するある富裕層の女性は、「上海の中古不動産市場は、2017年以降まったく動かなくなった」と明かす。彼女は投資用に買ったマンションを売りに出している最中だが、買い手は現れない。「たまに内覧希望者はいるのですが、商談には至りません。ずっと空き家のまま結局1年が過ぎました」(同)と苦笑する。

 彼女自身も分かっているのだ。「2000万元などという法外な値段をつけた物件なんて、一体誰が買うのか」(同)ということを。値段を下げなければ売り抜けられないことは十分に承知している。だが「絶対下げたくはない」という気持ちもあり、葛藤にさいなまれている。

 11月15日に国家統計局が発表した「70都市の商品住宅販売価格変動状況」によれば、上海の中古住宅の販売価格は前年同月比で2.6ポイント、前月比で0.2ポイント下落している。もはや値段を下げなければ中古住宅は買い手がつかない状況だ。ちなみに、中国の一級都市の空き家率は22%(全国城市住房市場調査報告、2015年)、上海は18.5%(中国家庭金融調査与研究中心、2014年)だという。

 上海の街が暗くなったと思ったのは、無数にそびえる高層マンションのせいだった。空き部屋が増えたため、灯りがともらなくなったのだ。人が住まない投資用マンションは以前からあったが、空き家がここ数年でさらに増えた感は否めない。

出稼ぎ労働者もいなくなった

 暗さの原因としてもう1つ思い当たることがあるとすれば、上海に居住する外地人(出稼ぎ労働者)が減ったことである。

 冒頭で触れた地下鉄10号線の「上海体育場駅」周辺には、エレベーターのない、6階建ての住宅が集まる「小区」と呼ばれる地区が複数ある。小区でも、以前よりも明らかに空き家が増え、暗くなっていた。

 2016年末に上海で不動産価格がジワジワと下がり始めると、不動産オーナーは「これが最後のチャンス」とばかりに入居者を追い出し、売り抜ける準備をした。だが買い手はつかず、家に灯りはともらない。住む人がいないので家賃も入らず、銀行ローンもだんだんと重荷となってくる。

 “塩漬け物件”が今後さらに積み増すのだとしたら、上海の街はますます漆黒の闇に沈んでしまうことになる。