中国で「日本人への襲撃」はまだ続く…どんどん貧しくなる国民と警察のリストラで治安も悪化!すべては「金融危機の放置」から始まっていた
日本人襲撃の背景にある経済低迷
中国で日本人学校のスクールバスが襲われ、日本人の親子がけがをした事件は、衝撃を持って世界に伝えられた。筆者は、かねてこうした日本人を襲う事件が発生しはしまいかと警戒していたが、現実のものとなってしまった。
前編「「蘇州・日本人親子襲撃事件」のウラにある「習近平の経済失策」…!「金融危機」へのヌルい対応が招く「排外主義」の深刻な実態」でお伝えしたように、中国では、経済の疲弊が国民に広く影響していま凄惨な犯罪が繰り返されている。
不動産バブルが崩壊し、経済低迷が続く…Photo/gettyimages© 現代ビジネス
今回の日本人親子の襲撃事件は、今後、日本人をはじめ外国人をターゲットにした犯罪の増加につながりはしないか、警戒を強める必要があるだろう。
しかし、問題は習近平国家主席が疲弊する経済への対策に、全く積極的でないことだ。
金融危機が招く「長期停滞」
日本のバブル崩壊後に発生した金融危機は、公的資金の注入までに時間がかかり経済に大きなダメージを来した。この反省から、中国でも急がなければならないのは、破綻が相次いでいる中小金融機関への対応だ。
しかし、中国政府は6月25日、「不動産不況に端を発する金融危機を防ぐための基金(金融安定保障基金)を設ける」との方針だが、実態は政府の公的資金ではなく、主に金融機関や金融インフラ企業が拠出することになっており、規模もまた小さい。中国人民銀行(中央銀行)は緊急時に低利融資で基金の規模を拡大するとしているが、中央政府はスキームを提示するだけで、資金を一切提供しない。
日本でも紆余曲折を経て金融安定化基金を設立されたが、中央政府主導だった。
不動産バブル崩壊でバランスシートが毀損している金融機関にさらなる資金負担をさせることが難しかったからだが、現在の中国もまったく同じ状況だ。
中央政府が積極的に関与しない限り、苦境にあえぐ民間の金融関連企業から多額の資金が集まるとは到底思えない。中国政府が提示した案は「絵に描いた餅」に過ぎなく、金融システムに対する懸念を払拭することはできないだろう。
ハイテク産業で膨れ上がる「在庫」
ハイテク製造業にテコ入れを図ることで景気を回復させようとする中央政府の戦略にも暗雲が漂い始めている。
習近平国家主席が「新たな質の生産力」を重視していることを受け、銀行からの融資が急拡大したことでハイテク製造業は過剰生産能力を抱える状態となっている。
中国のEVは過剰生産の状況にある Photo/gettyimages© 現代ビジネス
電気自動車(EV)の過剰生産は自明だが、太陽光発電パネルや風力発電装置などの分野でも販売価格が急落し、企業の共倒れが常態化している。
在庫も猛烈な勢いで増加している。英調査企業「オックスフォードエコノミクス」によれば、中国の生産能力はパンデミック前と比べて3%増加したが、在庫は11%も増加したという。
供給面を強化しても、不動産バブル崩壊で国内需要が低迷しており、需給ギャップは広がるばかり。頼みの綱の輸出が期待ほど増えていないことも在庫が急増している理由だ。
在庫の増加はGDPでは投資の増加とみなされるため、成長率の数字を押し上げるが、販売による資金回収ができなければハイテク製造業の財務は大きく痛む。不動産業に代わる新たな成長エンジンとして期待されるハイテク製造業でも不良債権が急増すれば、金融機関にとっては「泣き面に蜂」だ。
かつての日本のように中国でも大規模な金融危機が起きる可能性は高まるばかりだ。
「貧乏人3点セット」が値上がり
金融危機がもたらした大不況の下、日本では「就職氷河期世代」が生まれてしまったが、中国の若者は既にそれ以上の苦しみを味わっている。
今年の新卒大学生の内定率(4月中旬時点)は前年比2.4ポイント減の48%だ。「貧乏人3点セット(カップ麺、ザーサイ、コーラ類)」と呼ばれる若者向けの飲食品価格の値上げも止まらない。
1990年代末から日本では経済上の理由で中高年男性の自殺が急増したが、中国の中高年世代も苦しい生活を強いられている。
こうした状況で、起きたのが6月24日、日本人の親子への襲撃事件だった。中国ではこのところ無差別殺傷事件が相次いでいることを考えれば、事態は深刻だ。
中国政府は「同国は最も安全な国だ」と主張しているが、「財政難に苦しむ地方政府の治安維持のための資金が底をつきた」との指摘が出ていることが気がかりだ。
中国政府はAIなど最新鋭のテクノロジーを駆使して監視国家化を進めているが、財源不足で治安要員のリストラが続き、不満分子の摘発がこれまでのように十分に行うことができなくなっているというのだ。
習近平国家主席は有効な経済対策を打たない…Photo/gettyimages© 現代ビジネス
バブル崩壊により、中国の治安が著しく悪化しないことを祈るばかりだ。
連載記事『中国・上海の出生率が東京よりもひどい「0.6」になっていた…!中国で急激に進む「人口減少社会」に習近平が放った「ヤバすぎる一言」」でも、中国が長期停滞に陥る理由を解説しているので、ぜひ参考としてほしい。