北海道旭川市で2021年にいじめを受けていた中学2年の広瀬爽彩(さあや)さん(当時14歳)が自殺した問題で6月30日に市の再調査委員会が「いじめが主たる原因であった可能性が高い」とする報告書の概要版を今津寛介市長に提出したことを受け、広瀬さんの母親が2日、弁護士を通して談話を発表した。「とてもつらい答えですが、しっかり受け止めたいと思います」などとしている。

 市教育委員会の第三者委員会は22年9月に公表した最終報告書で、上級生らによるいじめを認定したが、いじめと自殺の因果関係は「不明」とした。「調査が不十分」とする遺族側の意向を受け、今津市長が教育評論家の尾木直樹氏を委員長とする再調査委を設置。改めて事実関係を調べていた。

 再調査委は、広瀬さんは、いじめによる心的外傷後ストレス障害(PTSD)が長期化し、SNSの投稿などから「恐怖や死についても最後まで言及され、継続して苦しめ、死を決意させたと判断することは困難ではない」と認定。広瀬さんの動作をまねて笑うなどした当時のクラス内の行為を含めて7件のいじめがあったと結論づけた。

 母親は再調査について、「爽彩の視点に立って、爽彩に寄り添った調査をしてくれている」と感謝の気持ちを示した。また、いじめのフラッシュバックで苦しむ様子などが明らかになったことに対して驚き、悲しい気持ちを吐露しながら、「やっと答えが出た」「爽彩も、きっと安心してくれたと思います」と複雑な胸の内を明かした。

 これまでを振り返り、「長くて辛い日々でしたが、再調査の結果は以前とまったく違うものになりました。これまで知らなかった『いじめ』が見つかり、前の調査では認めてもらえなかった『いじめ』も認定されました。ぼんやりしていたいじめの姿が、とてもはっきりと見えるようになったことに驚いています」とつづった。【横田信行】

談話全文

 ようやく、再調査の結果が出ました。1年6カ月は長い期間でしたが、爽彩の声を見つけるためにどうしても必要な時間だったのだと思います。

 本当に大変な調査をしてくださった再調査委員のみなさん、再調査を決断してくださった旭川市長、再調査を支えてくださった旭川市民のみなさん、そして温かい支援の手を差し伸べてくださった全国の皆さんに、心から感謝を申し上げたいと思います。爽彩に寄り添った対応をしていただき、本当にありがとうございました。爽彩も、きっと安心してくれたと思います。

 特に、難しい再調査を決断して、全国各地から専門家を集めたり、予算をつけたり、再調査を全面的にサポートしてくださった市長には感謝しかありません。市長の決断なしに今回の調査結果はなかったと感謝しています。

 再調査の中で、あのときのことを思い出すのは本当につらいことでした。聴き取りのとき、自然と涙がこぼれてしまうこともありました。眠れなくなることもありました。