男女別学の県立高校を共学化するかどうかの議論が、埼玉県内で巻き起こっている。県の第三者機関が昨夏、共学化を県教育委員会に勧告したが、対象の高校で生徒や保護者らが相次いで反対を表明した。今年8月に勧告への回答期限を迎える中、県教委は中高生や保護者に共学化の賛否を問うアンケートを実施するなどして、対応を模索している。(さいたま支局 服部菜摘)

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 埼玉県内には現在、男女別学の県立高が計12あり、内訳は男子校5、女子校7。多くが旧制中学や高等女学校の流れをくむ進学校として知られ、各界で活躍する人材を多く輩出している。

 一連の議論のきっかけは、「男子高が女子の入学を拒んでいるのは不適切だ」という県に寄せられた1件の苦情だった。弁護士らで構成される「県男女共同参画苦情処理委員」が昨年8月、「男女共同参画のために共学化が必要であるとの認識は、すでに社会共通の認識に成熟している」との意見をまとめ、1年以内に対応策を示すよう県教委に勧告した。同委員は県民からの苦情を受けて調査し、必要に応じて県に助言や勧告を行う第三者機関だ。

 最初に反応したのは、男女別学高校の卒業生や保護者らだ。共学化に反対するインターネット署名を昨年12月に始め、今年5月下旬には12校の保護者代表が「各校で保護者の6割弱から9割が共学化に反対している」とする意見書を大野元裕知事らに提出した。

 男子校の浦和高では3月の集会で生徒たちが次々とマイクを握り、「定員割れなどのやむを得ない理由もないのに、共学化されるとしたら悔しい」「異性がいると埋もれてしまう意見を共有できる環境が好き」などと語った。

 一方、教育関係者ら約200人で作る市民団体「共学ネット・さいたま」は、別学は「公立としての公共性、公平性に欠けている」とする意見書を県教委に提出。4月には、2000年代に全県立高の共学化に踏み切った宮城県の関係者を招いて講演会を開いた。

 文部科学省の学校基本調査では、男子のみ、女子のみが通う公立高校は1960年代に全国に400校近くあったが、少子化による統廃合やジェンダー平等意識の高まりなどで次々と共学化し、2023年度には45校(男子のみ15、女子のみ30)に減った。このうち群馬県に埼玉県と同数の12校、栃木県に8校があり、北関東に7割が集中する。

 実は、埼玉県では02年、今回と同じように同委員が共学化を勧告し、県教委が翌年に別学を維持する結論を出した経緯がある。再び火が付いた共学化をめぐる議論に対し、県教委は「関係者の声を広く聞く必要がある」として、4~5月に県内の中高生と保護者108万人を対象にインターネットのアンケートを実施。7万9000人が回答し、現在、結果を集計中だ。

 勧告への回答期限は8月末。県教委幹部は「結果をどう集計し、分析するか。今後の県立高のあり方に関わる話になり、対応には慎重にならざるを得ない」と話している。