【ワシントン=坂本一之】バイデン米政権は14日、国内産業の育成や保護のため、中国製の電気自動車(EV)や太陽光発電の関連品、鉄鋼などに対する関税を2~4倍に引き上げると発表した。経済や安全保障上の重要産業に絞り、「不公正な貿易慣行」を続ける中国の安価な製品が流入することを阻止する。バイデン大統領が指示した。

バイデン政権は、不公正貿易と見なす相手国への制裁を定めた米通商法301条などに基づき、現行25%の中国製EVに対する制裁関税を年内に4倍の100%にする。鉄鋼とアルミニウムの製品に関しても年内に現行の0~7・5%を25%に引き上げる。

今回の措置は、米政権が育成に注力するクリーンエネルギー関連産業にも及んだ。EV向けリチウムイオン電池の関税を7・5%から25%に、太陽光発電の関連品は25%から50%に引き上げる。

関税を強化する理由については「中国が人為的に低価格製品を世界市場にあふれさせている」と指摘。中国政府の産業支援による過剰生産によって、安価な中国製品が米企業に与える悪影響に対応する措置だと説明している。

また、知的財産の窃取などを踏まえ、「中国の不公正な貿易慣行が米国の企業や労働者を脅かしている」と厳しく批判。米国のサプライチェーン(供給網)を維持していく上でも、制裁関税で米国の企業活動を保護する必要性を強調した。

リチウムイオン電池の材料となる重要鉱物の天然黒鉛(グラファイト)は0%から25%にする。黒鉛は世界生産の8割超を中国が占めるといわれる。中国依存を回避し、米国内の供給網を強化する狙いがある。供給網の脆弱性が問題視された半導体に関しては税率を25年までに25%から2倍の50%に強化する。

米通商法301条を巡っては、対中貿易赤字を問題視したトランプ前政権が2018年に中国からの輸入品に制裁関税を発動し、米中が報復関税を実施する貿易戦争に発展した。