中国の「EV大量輸出」「経済無策」に英経済誌がブチギレ…!そのウラにある習近平の「ぜいたく嫌い」と「EV大失速」の深刻すぎる現実

習近平の「デフレ輸出」に世界がキレた…!

中国から輸出されたEVが大量に売れ残る…。中国政府の多額の補助金によって中国で大量につくられるEVに対して、アメリカでもヨーロッパでも怨嗟の声が広がっている。

中国から大量に輸出されたEVが売れ残っているため、「欧州各地の港がEV専用の巨大な駐車場と化してしまった」との悲鳴が聞こえてくるほどだ。

中国を訪問し怒りをあらわにした米イエレン財務長官 Photo/gettyimages

中国を訪問し怒りをあらわにした米イエレン財務長官 Photo/gettyimages© 現代ビジネス

ドイツのキール世界経済研究所は10日、「中国政府はBYDに対して34億ユーロ(約5600億円)の補助金を交付している」との分析を明らかにした。過剰生産によって安価なEVや太陽光パネルが世界に広がり、「中国が世界にデフレを輸出している」と痛烈な批判を浴びている。

不公正な中国の姿勢に、先進国からは批判が殺到しているが、それだけではない。欧米諸国が中国製品の締め出しを始めている中、中国政府はグローバルサウス(新興・途上国の総称)への輸出拡大に活路を見いだそうとしているようなのだ。

近隣窮乏化策ともとられかねない政策をグローバルサウスの国々はどう考えるのだろうか。

 

ますます悪化する中国経済

中国の国内経済は、依然としてデフレ懸念が続いている。

国家統計局が4月11日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.1%上昇したが、伸び率は前月(0.7%上昇)から大幅に鈍化した。

内訳をみると、これまで好調だった「旅行」の伸び(6.0%上昇)も大幅に鈍化した。第1四半期のCPIは前年比で横ばいとなり、中国政府が掲げる「3%前後」の目標にはほど遠い状況だ。

消費者の節約志向も強まっており、特に高額商品の分野での不調が目立っている。

欧米高級ブランド企業の第1四半期の売り上げが大幅に減少すると予想されており、百貨店業界も苦境に陥っている。直近3ヵ月で有名百貨店10店舗が閉鎖に追い込まれており、バブル崩壊後の日本を彷彿とさせる状況となっている。

将来への不安を高める中国人は金(ゴールド)の購入に走っている。就職難にあえぐ若者の間でも「金豆(豆粒大の小さな金製品)」への投資がブームとなっている。

このような事態を踏まえ、中国政府もようやく重い腰を上げた。

「需要対策」を放棄する習近平への絶望

国家発展改革委員会は11日、「設備の更新と消費財の下取りを促進するプログラムに参加する企業に大規模な資金援助を行う」と発表した。

支援策の詳細は不明だが、消費財の下取りを促進することで今年の小売売上高は0.5%引き上げられるとしている。だが、今回の対策も供給サイドに軸足を置いている。

中国は深刻な消費不況により過剰生産に陥っている Photo/gettyimages

中国は深刻な消費不況により過剰生産に陥っている Photo/gettyimages© 現代ビジネス

設備投資は2027年までに年間3.8%押し上げられるとしており、新たな政策を講じることで中国経済の需給ギャップがますます拡大してしまう可能性が高い。

つまり、供給過剰になって物が売れずにデフレが加速してしまうということ。海外での中国の経済政策に対する評価は下がる一方だ。

「英エコノミスト誌」が怒っている…

英エコノミスト誌(4月6日号)は「習氏の経済対策、3つの誤り」と題する記事を掲載したが、真っ先に誤りとして指摘したのが「消費者を軽視している」点だ。

個人消費の規模は不動産やハイテク産業よりはるかに大きい。

中国のGDPに占める個人消費の比率は37%と世界の水準よりかなり低く、消費を刺激する政策は中国経済に絶大な効果をもたらすはずだ。

ところが、である。

過剰な政府補助金でEVは作りすぎになっている…Photo/gettyimages

過剰な政府補助金でEVは作りすぎになっている…Photo/gettyimages© 現代ビジネス

習近平国家主席は、これまでもさんざん指摘してきたように倹約志向であり、消費喚起策に消極的だ。ぜいたくを嫌う権威主義者は、梃でも動かない。

そうした中、補助金で設備投資された過剰な生産力を、世界に振りまいて「デフレ輸出」を進めているのだから、批判を受けるのは当然と言えるかもしれない。しかも、その輸出先が新興国へと振り向けられ始めているのだから、筆者の不安は増すばかりだ。

後編「習近平の「EV輸出攻勢」で欧州各地の港に異変が…!これから近隣諸国に広がる「中国・経済無策」のとばっちり、その悲惨な中身」では、欧米の批判に対して中国が踏み切ろうとしているグローバルサウスへの輸出拡大と、それによりもたらされかねない大いなる懸念を見ていこう。