リニア中央新幹線の静岡工区での着工に反対してきた静岡県の川勝平太知事が辞職表明したことについて、沿線自治体などの関係者からは事業進展への期待や、今後の知事選の行方を警戒する声が上がっている。

 リニア沿線の10都府県で構成する「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」の会長を務める愛知県の大村秀章知事は3日、川勝氏の辞職表明について「驚いた」とした上で、リニアについて「一日も早く整備、開業したい。その思い一心だ」と語った。

 名古屋市の河村たかし市長は記者団に「(事業は)進むでしょ。東京―名古屋間ができて一番ありがたいのは名古屋。それにふさわしい街にしたい」と述べた。JR東海に対しては「静岡県民にとって大井川の水は命の水。丁寧に説明して進めてほしい」と注文をつけた。

 「これでリニアに光が見える」。国土交通省のある幹部は笑みを浮かべた。

 川勝氏は時に国交省職員を「不誠実」などと批判してきた。同省幹部は「『中央と闘う知事』を装うことで、政治的な求心力を保とうとしたのではないか」と推測し、「工事が何年も遅れ、工費が膨れ上がった。それはもう取り戻せない」と恨み節を漏らした。

 焦点は川勝氏の次の知事の対応に移る。別の国交省幹部は「これで間違いなく計画が進むとまでは言えない」と警戒しつつ、「静岡で明確にリニアに反対する人は少なくなる」と期待感を示した。

 JR東海は3日、「静岡工区の工事に一日でも早く着手できるよう真摯(しんし)に取り組む」とのコメントを出した。【川瀬慎一朗、加藤沙波、真貝恒平、原田啓之】