全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!

北野です。



3月15日~17日、ロシアでは大統領選挙が実施されました。

『毎日新聞』3月18日。



〈ロシア大統領選(任期6年)では17日、現職のウラジー
ミル・プーチン大統領(71)が通算5選を決め、「何より
もまずロシア国民に感謝したい。我々は一つのチームだ」
と勝利を宣言した。

中央選挙管理委員会の暫定集計によると、開票率70・03%
でプーチン氏が87・17%を獲得した。〉
ーー


得票率は、87.17%だそうです。

まあ、世界中でこの結果に驚いている人は、一人もいない
でしょう。


1、プーチンは、ロシアメディアを完全に支配していて、2
4時間自分のCMを流し続けている。


2、脅威になりそうな人物は、中央選挙管理委員会が立候補
させない。

2018年の大統領選挙では、「プーチン最強の敵」ナワリヌ
イが候補者になれませんでした。

今回の大統領選挙では、リベラル派の元下院議員ナデージ
ディンが候補者登録を拒否されました。


この二つの作戦で、「必ずプーチンが勝利する状態」をつ
くって選挙が実施される。

だから、ロシアでは、選挙結果が最初から決まっています。

それで私は、「ロシアは『なんちゃって民主主義』だ」と
ずっと言い続けてきました。


さて、今日は、いい機会ですので、プーチンの24年間をざ
っくり振り返ってみようと思います。



▼栄光の1期目2期目



プーチンの1期目2期目は、2000年から2008年です。

まさに、「絶頂時代」と言えるでしょう。

なんといってもこの8年間、ロシア経済は、年平均7%の成
長を続けていたのです。

プーチンは、ソ連崩壊後ボロボロになっていたロシアを復
活させることに成功しました。

さらに、1期目2期目の8年間で、さまざまな戦いをしてい
ます。


・90年代ロシアの政治経済を牛耳っていたユダヤ系新興
財閥との戦い

具体的には、


「クレムリンのゴッドファザー」と呼ばれたベレゾフス
キー、

「ロシアのメディア王」と呼ばれたグシンスキー、

「ロシアの石油王」と呼ばれたホドルコフスキー


と戦い、勝利しました。

これに対しアメリカ陣営は、ロシアの「縄張り」である旧
ソ連圏でカラー革命を起こして対抗しました。

具体的には、


2003年のグルジア、バラ革命

2004年のウクライナ、オレンジ革命

2005年のキルギス、チューリップ革命


これらの革命がアメリカの支援によって行われたこと、

失脚したシェワルナゼ元グルジア大統領、アカエフ元キル
ギス大統領などが証言しています。


(@ここまで「トンデモ陰謀論だ!」と思われた方は、拙


◆『クレムリンメソッド』

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をご一読ください。
山盛り証拠を見ることができます。)


さて、旧ソ連圏で頻発する革命に恐怖したプーチンは200
5年、重要な【 戦略的決断 】をしています。


それが、「中国と事実上の同盟関係を築くこと」です。

今、「中国ロシア同盟」と言ったら、誰でも「そうだよな」
と思うでしょう。

しかし、プーチンが「中ロ同盟構築」を決断したのは2005
年なのです。

ちなみに私の2冊目の本の名は、


◆『中国ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』


で、出版されたのは2007年です。

その時、すでに「中ロ同盟」は成立していたのです。


いずれにしても、1期目2期目のプーチンは、

ユダヤ系新興財閥

アメリカ

との戦いに明け暮れていました。

経済は年平均7%の急成長を続けていた。

当時プーチン人気は本物でした。



▼プーチン首相の時代~米ロ再起動時代



さて、プーチンは2008年、首相になりました。

大統領の座は、手下のメドベージェフに譲っています。

これは、憲法の規定で、「同じ人物が大統領をできるのは、
連続二期まで」とあったからです。

2008年8月、「ロシアーグルジア戦争」が勃発。

2008年9月、アメリカ発「100年に1度の大不況」が起こり
ました。


その後、アメリカとロシアは、「再起動時代」に入ってい
きます。

アメリカの大統領は若いオバマ。

ロシアの大統領は、アメリカ好きのミーハー、メドベージ
ェフ。

(今は、アル中極右になっていますが。)


当時オバマは47歳、メドは43歳。

若い二人の時代、米ロ関係は、とても良好だったのです。



▼プーチン3期目~クリミア併合という【戦略的敗北】



2012年、プーチンは、再び大統領になりました。

この時、2008年のプーチンとは変わっていました。

「動機」が変わったように見えるのです。

二つ大きな事件が影響したと思います。


一つは、メドベージェフの裏切りです。

彼は、プーチンとの契約を破り、二期目を目指しはじめた
のです。

結局プーチンは、メドとの政争に勝ちましたが、「ポチ」
だと思っていたメドの裏切りに、「人間不信」が増したは
ずです。


もう一つは、2011年12月に起きた、「ソ連崩壊後最大の反
政権デモ」です。

その時の映像です。↓
https://www.youtube.com/watch?v=yV8mfWtnMCQ

英語字幕を出すこともできますので、気が向いたら見てみ
てください。

モスクワだけで10万人を超える人が、「プーチン辞めろ!」
などの要求を掲げたデモをしました。


2008年、8年間の経済急成長を成し遂げたプーチンは、尊
敬され、愛されていました。

ところが、2011年末、国民はもう、「プーチンは戻ってく
るな!」と叫んでいる。

プーチンは、民心の変わりやすさに驚いたことでしょう。


この辺りからプーチンは、「ロシア国」よりも、

「自分、家族、友人の利益」を重視するようになっていっ
た気がします。


いずれにしても、プーチンの支持率は下がっていました。

2008年4月86%あったプーチンの支持率は、

2013年1月63%まで23%減っていた。

それでも、岸田さんと比べたらずいぶん高いです。

しかし、プーチンにとっては安心な数字ではなかったので
しょう。


2014年3月、プーチンは、ウクライナからクリミアを奪い
ました。

すると支持率はみるみる回復し、2014年9月には86%まで
戻したのです。


しかし、クリミア併合は、明らかに【 戦略的敗北 】で
した。

というのも、クリミア併合後の制裁で、ロシア経済はまっ
たく成長しなくなったからです。

制裁の他にも、ロシア経済の成長を妨げる大きな要因があ
りました。

それが、アメリカで起きた「シェール革命」です。

これで、アメリカは世界一の産油、産ガス国になった。

供給量が増え、原油、ガス価格が以前ほど上がらなくなっ
たのです。

結果、2014年から2019年までロシア経済の平均成長率は
年0.96%まで下がってしまった。

(@2020年、21年は新型コロナパンデミック大不況、22
年はウクライナ戦争勃発ということでカウントしません。)



▼プーチン4期目~ウクライナ戦争という【戦略的敗北】



2018年、プーチンは再選を果たしました。

4期目突入です。

しかし、1期目2期目とは、すでに全然違う状況になってい
ました。

プーチンは、「どうやってロシア経済を成長させればいい
か全然わからない状況」だったのです。

プーチンは

・NATO拡大阻止
・ルガンスク、ドネツクのロシア系住民を救え!
・ウクライナの「非ナチス化」「非軍事化」

などを挙げて、ウクライナ侵攻を開始しました。

しかし、『全ロシア将校協会』のイヴァショフ会長(当時
)は、

ウクライナ侵攻の動機について、

(侵攻がはじまる25日前の)2022年1月31日、

こんなことを公開書簡に書いていました。



〈「ロシアは現在、深刻なシステム危機に陥っている。

しかも、ロシアの指導者たちは、国をシステム危機から救
うことができないことを理解している。

システム危機が続くことで、いずれ民衆が蜂起し、政権交
代が起こる可能性が出てくる」。〉
ーー



ロシアは深刻なシステム危機に陥っている。

そしてプーチンは、「国を救うことはできない」と考えて
いる。

イヴァショフは、だからプーチンはウクライナ侵攻を決め
たと断言します。



〈「戦争は、しばらくの期間、反国家的権力と、国民から
盗んだ富を守るための手段だ」〉
──



要するにプーチンは、自分の権力と富を守るためにウクラ
イナ戦争を開始したと。

そして、ウクライナ戦争がはじまると、プーチンの支持率
は爆上がりしました。

2021年8月61%だったのが、侵攻開始後2022年8月83%ま
で上がったのです。




▼まとめ



まとめてみましょう。


・1期2期(2000~2008年)

GDPが年平均7%の成長をつづける。

ロシア国民から心底愛され、尊敬されていた。


・首相時代(2008年~2012年)

腹心メドベージェフの裏切りと、ロシア国民の忠誠心のな
さに幻滅する。

そして、ロシアの国益よりも、自分自身と家族、友人の利
益を最優先するようになっていく。


・3期(2012年~2018年)

クリミア併合で大人気に。

しかし、その後の制裁で、ロシアの経済長は完全に止まっ
た。


・4期(2018年~2024年)

ウクライナ戦争開始で大人気に。

しかし、【 戦略的敗北 】を喫している。


こう見ると、プーチンの絶頂期は、1期目2期目だったこと
がわかります。

その後は、経済を成長させる方法がわからず、戦争によっ
て人気をつないでいる状態。


「5期目のプーチン政権はどうなるのでしょうか?」


傾向を見れば、ロシアにとっても世界にとっても、何もい
いことはもたらさないでしょう。

むしろ、「プーチンの害を最小限に抑えること」が、日本
や国際社会の最重要課題といえそうです。


◆重要PS

日本人には、【戦略的勝利】と【戦術的勝利】、

【戦略的敗北】と【戦術的敗北】

の違いがわかりにくいようです。

それで、「満州事変大勝利!」とか「真珠湾攻撃大勝利!

などと、【 戦略的敗北につながる戦術的大勝利 】

に歓喜してしまう。

今も、「プーチン負けてない!」などと譲らない人もい
ます。

とにかく、【 戦術脳 】から【 戦略脳 】にかえる
ことは、

日本とあなた自身を長期的に繁栄させるために絶対必要
です。

もうすぐ、この件を詳述した本を出版する予定ですので、
是非ご一読ください。


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