リニア新幹線の試験車両=2023年10月16日午後3時45分、山梨県都留市、良永うめか撮影

リニア新幹線の試験車両=2023年10月16日午後3時45分、山梨県都留市、良永うめか撮影© 朝日新聞社

 JR東海は29日、リニア中央新幹線の東京・品川―名古屋間について、目標としていた2027年の開業を断念する方針を示した。最難関工区とされる南アルプストンネル(全長25キロ)のうち、静岡県内での工事を同県が認めず、着工できていないのが理由。同工区の工事は約10年かかると見込まれており、開業は早くても34年以降にずれ込む見通しだ。

 この日、静岡工区の水資源や環境対策をテーマに国土交通省で開かれた専門家による会議で、JR東海の丹羽俊介社長が明らかにした。丹羽社長は「(着工できない)静岡工区が名古屋までの開業の遅れに直結している」としたうえで、「残念ながら、2027年の名古屋までの開業は実現できる状況にはない」と述べた。

 リニア工事は14年12月に着工。南アルプストンネルは山梨、静岡、長野3県にまたがり、3工区に分かれている。静岡工区(8・9キロ)は17年11月に工事契約を締結し、着工から開業まで約10年間を見込んでいたが、静岡県が大井川の水資源や自然環境への影響に懸念があると表明した。