来年6月に向けて、勝てる候補者の擁立を急ぐ

自民党静岡県支部連合会(会長・城内実衆院議員)は2024年3月23日、静岡市内で役員らによる会合を持った。来年6月に行われる県知事選に擁立する候補予定者を決めるのが最大のテーマだった。

前回選(2021年6月)では、自民党県連は参院議員2期目途中の前国土交通副大臣を擁立した。ところが、約2カ月前にようやく立候補を表明したが、所属派閥から反対を受けたことで調整が遅れ、選挙の1カ月前になって、自民党推薦を受けた。

多くの支援者が集まった自民党推薦候補の知事選出馬式(2021年6月3日静岡市、筆者撮影)

多くの支援者が集まった自民党推薦候補の知事選出馬式(2021年6月3日静岡市、筆者撮影)© 現代ビジネス

選挙戦は一方的となり、開票と同時に川勝知事の当確が打たれた。結局、約33万票もの大差をつけられる惨敗となった。

前回選の惨敗を踏まえ、自民党県連は勝てる候補者の擁立を急ぐこととなった。

昨年11月に続いて、2回目の会合となったが、今回も可能性のある複数の人物について情報を共有しただけで、いまのところ、具体的な候補予定者は何も決まっていないのが実情のようだ。いずれも非公開である。

会議後、城内会長は「最もふさわしい人になってもらう。絞り込みはできていないが、いろいろな方面の意見を聞いて決めたい」などと歯切れの悪い発言に終始した。

一方、3月18日閉会の2月県議会をはじめ、昨年の6月、9月、12月の県議会ごとに「不適切発言」などで物議を醸すことが恒例となった川勝平太知事だが、毎回、何とか無事に乗り切っている。

18日の県議会閉会の直後に、4月1日からスタートする新年度の県庁組織体制を発表した。今回の刷新人事で反リニア色がさらに強まった。

何よりもリニア問題で、「命の水を守る」「南アルプスの自然環境を守る」などわかりやすいキャッチフレーズを連発して、いまでも多くの県民の支持を集めている。

それだけに、刷新人事で「南アルプス担当部長」を新設するなど、今後も引き続き、JR東海へのリニア妨害に取り組む強い姿勢を示した。

川勝知事は御年75歳であり、その年齢層を静岡県では『壮年熟期』と呼ぶことに決めている。

『壮年熟期』だけに、見た目も若く、4期目の任期1年3カ月を経て、5期目の新たな4年に向けて着々と準備を進めているようだ。

川勝知事の4期目の出陣式(2021年6月3日、筆者撮影)

川勝知事の4期目の出陣式(2021年6月3日、筆者撮影)© 現代ビジネス

つまり、川勝知事の続投への意欲が十分に見えてくる。

それだけでなく、自民党擁立の候補との選挙戦となれば、川勝知事に強い追い風が吹くことは間違いない。

安倍派幹部の塩谷立衆院議員(比例東海ブロック)はじめ、派閥の政治資金パーティーの裏金疑惑で自民党には大逆風が吹き荒れ、県民の厳しい批判が向けられている。

川勝知事には非常に有利な情勢である。

衆院議員の任期は来年10月まで、参院選は来年6月に予定される。となれば、衆院解散、衆参同日選挙と県知事選がほぼ同じ時期にある可能性もありうる。

もし、そんなことになれば、前回選と同様に、追い風を受けた川勝知事の圧勝となってもおかしくないだろう。

本当に、このまま反リニアを貫く川勝知事の続投を許してしまうのか?

知事不信任決議以外に、川勝知事に勝てないかも

有力候補者の擁立を前提にしながらも、現状では、それだけでは川勝知事に勝てる可能性は低いのがよくわかる。

そんなことは百も承知であり、自民党県連もただ手をこまねいているわけにはいかないだろう。

川勝知事に対抗できる、自民党県連の最も考えられる方策は、県議会で知事不信任決議を突きつけることである。

満天下に川勝知事の‟悪名‟をさらすことができれば、自民党候補にも勝ち目は生まれるからだ。

逆に言えば、知事不信任決議以外に、川勝知事に勝てないかもしれない。

そう考えれば、知事不信任決議の勝負どころは、ことしの9月県議会あるいは12月県議会の可能性が高い。

当然、それまでに候補者のめどを立てた上で、不信任決議案の提案、可決に向けて動くしかない。

知事不信任決議案を巡るこれまでの静岡県議会の動きを振り返る。

川勝知事の「御殿場にはコシヒカリしかない」発言で、知事不信任決議案は、一躍、注目を集めた。

2021年10月の参院静岡選挙区補欠選挙の応援演説で、元・御殿場市長の自民党公認候補をやゆして、「コシヒカリ発言」を行い、この発言が報道されると、御殿場市民をはじめ、県民の怒りを買い、御殿場市民を傷つけたとして県議会が問題にした。

当然、自民党県議団は、不信任決議案の提出を目指した。

自民に加え、公明党県議団、一部無所属議員が賛同したが、川勝知事を支える県議会第2会派「ふじのくに県民クラブ」の壁を切り崩すことができず、全議席68のうち、可決要件の4分の3に当たる51の賛成票を集めることができなかった。

その結果、2021年11月の臨時議会で、法的拘束力のない辞職勧告決議案を可決して、お茶を濁した。

その辞職勧告決議が昨年6月県議会で川勝知事の不信任決議案の提出にまで発展した。

【後編】『川勝知事をなぜ辞めさせられない…自民党静岡県連がこれほどまで弱体化している「大きな理由」』に続く。ここでは、辞職勧告が決議された後、川勝知事がとった不可解な行動の数々を振り返る。